第8話:新たな出会い
「うぅ・・・俺は・・・どうなったんだ。ここはどこだ?」
力の制御に失敗して吹き飛ばされた海人は滝に叩きつけられたが、そのまま滝を貫いていてその裏側にある洞窟の中にいた。
「・・・滝の裏にこんな洞窟があるとはね。しかも何て神秘的な光景だ」
洞窟内は巨大な水晶が立ち並んだ広大な空間だった。さらに洞窟内を照らす青白い光景に海人は息を飲んでいた。そしてその奥の方に色の違う紫色の水晶が目に入り近づいていった。
「何であれだけ色が違うんだ?こ・・・これは」
紫水晶に近づくと中に人間がいた。それもなぜかメイド服を着た女性が全身を鎖で縛られて水晶に閉じ込められていた。
「なんでメイドが水晶の中にいるんだ?悪霊の類じゃないだろうな」
海人は刀で水晶を砕いて女性を出してあげようとした。流石に生きてるとは思えないがそのままにするのも気がひけた。思い切って刀で紫水晶を叩いてみたが。
「かったーーー!?何て硬さだ。ただの水晶じゃないのか!?」
ならばと周りに転がってる水晶を持ち上げ叩きつけてみたが木っ端微塵に砕け散った。
「・・・だめだ。これは砕けない。悪いがこのままにしておくしかないか」
水晶を砕くことを諦めた海人は改めて洞窟内を見渡した。滝の裏側にあるだけあって魔獣の類もいない。奥の方には植物も生えており探せば食料となるものもあるかもしれない。
「ここは・・・修行場所としては最適なんじゃないか。さっきみたいにいきなり襲われることもなさそうだ」
この水晶の洞窟を修行場所と決めた海人はキャンプ道具を取りに戻った。幸いなことに人一人分くらいは通れる隙間が滝にはあったので壁伝いに何とか荷物を運び入れることに成功した。
「よし。これで準備は完了だ。修行を始めるとするか」
キャンプの準備が整った海人は心氣顕現の修行に取り掛かった。身体の氣を高め刀をイメージしはじめた。さっき魔獣に襲われた時は一瞬とはいえ顕現ができた。後はイメージを固定化さえできればきっと完成するはず。
「(集中・・・集中だ・・・)」
すると海人の手に刀の形をしたものが現れ出した。限界まで氣を高めようとすると異変が現れた。顕現させようとした刀の氣がある方向に引き寄せられていった。そして先ほどのメイドが閉じ込められた水晶へと吸い込まれていった。
「何だ・・・これは?氣が水晶に吸い取られているのか」
やはり悪霊だったのかと思っていると紫水晶にヒビが入りはじめた。
ピシッピシッ
「あれだけやって傷一つ付かなかった水晶が・・・。このまま氣を吸わせればもしかしたら割れるのか?」
そこまで考えてこのメイドを水晶から出していいか迷った。どう考えても普通じゃない。出した瞬間に殺されたりする可能性もある。
「・・・やってみるか。鬼が出るか蛇が出るか試してやる」
海人は覚悟を決めると氣を手に集め水晶に全力で流し込んだ。
ビシビシビシっ!
水晶に次々とヒビが入り始めた。そして改めて中の女性を近くで見てみるとすごい美女であることが判った。
「頼むから襲ってきたりしないでくれよ・・・うおっ!」
海人は悲鳴を上げた。中の女性の瞳が突然開いたからだ。
「い・・・生きてるのか・・・ぐおっ!」
何と女性の手が水晶を砕いて海人の胸元を掴んだ。そしてさらに凄い勢いで氣を吸われた。
「やっぱ悪霊の類だったのか!うぐぅぅ!!」
氣を大量に吸われたが元々桁違いの氣量を持つ海人のため何とか耐えられた。女性の手を振りほどこうとしたがビクともしない。万力の様な力でつかまれていた。そして吸収が終わったと思うと水晶が完全に砕かれた。しばし2人で見つめ合っていたが女性が先に口を開いた。
「おはようございますマスター。あなたのお名前は?」
「マスターって俺のことか?俺は海人だ。焔木海人」
「海人様ですね。認識しました。これよりあなたにお仕えします」
「はぁ」
「・・・この鎖は邪魔ですね。ふんっ!」
メイドは全身に巻かれていた鎖を力づくで引きちぎった。とんでもないパワーだった。
「お前は人間なのか?名前は?」
「私の名前はゼロです。人間かと言われれば半分は人間ですが、戦闘用に作られた戦闘用人造人間です」
「人造人間?そんなものが?」
「長く眠りについておりましたが、やっと私も目覚めさせるマスターとお会いできました。今後ともよろしくお願いいたします」
「といわれてもな・・・」
海人はどうしたらいいのかわからずにいた。人造人間ってなんだよ。この島から出していいものなのか。考えても答えは出ずもう考えることをやめた。
「俺は修行中の身だ。勝手にしてくれ」
「承知しました。心氣錬成の修行ですね。それでしたら私がお手伝いできます。」
「お前心氣錬成を知っているのか?」
「はい。私も使用できますので」
このメイドとの出会いで俺の修行の効率は大幅にあがることになった。追放されたこの島でこうも立て続けに人との出会いがあるとは案外この島は悪いところでもないのかもしれないと思い始めていた。
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