第4話:いざ夢幻島へ
海人達は海を上を移動していた。
島までは途中までは現代的な大船で移動し島へは小舟を使って渡ることになるのだ。
小舟に乗ろうとしていた海人は瑞穂から荷物を受け取っていた。
「いよいよ夢幻島か。これが最後の言葉になるかもな」
「まだ死ぬと決まった訳ではありません。こちらでもできるだけの準備はしておりました。最悪、力の枷が外れなくても生き残る可能性はあります。あなたでも使用できる呪符も集められるだけ準備しました」
「随分と丁寧なことだな。呪符なんて高価なもんを」
「最低限の準備です。これがなければ島の魔獣に太刀打ちできません。あなたが使いこなせるかはわかりませんが・・・」
瑞穂からリュックを受け取った海人は荷物の中身を確認した。
中には食料品と生活用品と刀が一本のみ入っていた。
「・・・呪符なんて入ってないぞ」
「えっ・・・そんなはずは」
瑞穂は荷物を確認すると確かに入っていなかった。武器となるのは刀だけであった。
「刹那。呪符は確かに入れましたよね?」
「入れたよ!一緒に確認したよね?」
「・・・やられました。あの男ここまでやるとは・・・」
「まさか健太が!?」
瑞穂と刹那は身内がここまで悪辣なことをするとまで考えてはいなかった。
悔しそうな顔をしながら瑞穂が口をあけた。
「私の不手際でした・・・。申し訳ありません海人」
「ごめん・・・あいつタダじゃおかないよ。当主に言いつけてやる」
瑞穂と刹那が頭を下げて謝りをいれた。海人はそれを横目でみてつぶやいた。
「刀があるだけマシだ。もういいから島へ渡らせてくれ」
「しかし・・・」
「もう時間の無駄だ」
瑞穂は少しうつむくと胸元から呪符を取り出した。
「私の護身用の爆炎符です。5枚しかありませんが足しにはなるはずです」
「・・・まぁ一応もらっておくか。じゃあな」
海人は呪符を受け取ると小舟に乗り移り島へと移動し始めた。
「海人!3か月後にまたここにきます!何としても生き抜いてください!」
「死ぬんじゃないよ海人!」
瑞穂と刹那に見送られながら海人は島へと近づいて行った。
すると途中で別の世界に入り込んだような違和感を受けた・
「(結界を超えたのか。あまり気分のいいものじゃないな・・・」
海岸に辿り着き島への上陸をすると辺りを見渡した。
「これが夢幻島か・・・想像以上に大きい島だ」
はるか先まで広がる大地に島の中央かと思える場所にそびえたつ巨大な山。
これだけを見るとそこまで酷い島には見えなかったが、その考えが甘いことをすぐに思い知った。
はぁはぁはぁっ!
海人はひたすら走っていた。森に入った瞬間に狼のような魔獣に襲われたのだ。何とか2匹ほどは刀で撃退したが仲間を呼ばれ今は20匹近くの魔獣に襲われていた。
「(くそっ!次から次へと。これが夢幻島か)」
瑞穂から受け取っていた刀は最初の魔物との戦闘ですでの刃こぼれだらけになっていた。唯一の武器ともいれる刀がいきなりこの状態ではいよいよ終わりかもしれない。そして海人は行き止まりである崖に追い詰められた。
「ここまでか・・・上陸してすぐに死ぬのかよ」
自分のことをあざ笑っていた健太達の顔が頭に浮かぶ。あいつらは自分が死んでも何とも思わないだろう。瑞穂と刹那はどうかな・・・よくわからん。いよいよ覚悟を決めた海人は魔獣に向けて刀を向けたが船でもらった呪符があったことを思い出しだ。海人は呪符にあまり良い思い出がなかった。昔、ある事件に巻き込まれそうになったときにこの爆炎符をとっさに使ったのだが大爆発が起こったのだ。一族の人間にも重傷者を出してしまい、それが海人が幽閉された理由でもあった。
「(どうせこのまま死ぬのなら使ってみるか。6年振りの呪符だ。上手く使えるか判らんが)」
海人は爆炎符を魔獣に向けて投げ捨て、印を切ると言霊を放った。
「爆!」
その言葉を放った瞬間、世界が真っ白に染まった。まるで6年間溜まりこんでいたかのように爆炎符がとてつもない爆発を起こしたのだ。魔獣はすべて一瞬で吹き飛んだが海人自身もその爆発の威力で吹き飛んでいた。
「うぉぉぉぉぉ!!!!!!」
運よく湖に叩きつけられたが、そのままバウンドを繰り返し湖の半ばくらいでようやく止まることができた。意識を失いそうになっていた海人は何とか水上に浮かんでいた木に何とかしがみつくことができていた。
「ぐぅぅぅ・・・どうなってんだまったく・・・爆炎符ってちょっと大きな火の玉くらいの威力じゃないのか・・・」
そのまま海人の意識は消えていった。そんな海人の姿を遠くより見つめている老人が1人いた。
「ド派手な爆発が起こったと思ったらこの島に来客か。あるいは儂と同じ追放者か?」
老人は水の上を陸上のように走り海人のところまで到着した。そしてしばらく海人を観察したあとに担ぎ出しいずこかへと連れて行った。
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