第2話 商店街会議
公民館に入るとぼちぼち人が集まって来ているところだった。俺と健一郎もその辺に座る。虎太郎先輩がよってきた。
「よう、久しぶりに来たな」
「ちわ、虎太郎先輩」
「どうだい?知恵を持ってきたのかい?」
「そんな大層なものではないですが。クーポン券を作ってみたらどうでしょう。話題作りにもなりますし」
「なるほどね…いいかもしれんな。詳しい話は後で聞くか。さすがは知恵者ゴロウ」
「いえいえそんな。知恵者とか。考えるのが好きなだけで」
「いやあ。お前の知恵で勝った試合もよくあったろう?あの頃からお前知恵者って言われてたじゃん」
「いやあ。結局ただの40過ぎのうだつの上がらないおっさんですよ」
「そうかい。じゃあ会議でも宜しく頼むよ。ちなみに司会は俺な」
「はい、宜しくお願いします」
「ええー、では51回黒山商店街会議を始めます」
虎太郎先輩がホワイトボードの前に立ち各参加者はそれを囲む形で座っている。
「それぞれどの程度儲かっているか報告できる部分をお願いします」
カフェスイカの店長、篤史が立ち上がる。
「うちの儲けは前年よりはましですがそれでも儲けとしては少ない。もうちょい儲けたい所なので、商店街に人を呼び込みたいと言うことはあります。皆そんな感じじゃない?」
大体の参加者は頷いている。
虎太郎先輩はホワイトボードに"カフェスイカ儲けは少ない"と書いた。
「実際うちも人件費やらでトントンでして。何とか儲けたいので何とかしたいところですが…」
虎太郎先輩がちらりとこちらを見た。俺はタイミングだと思い、挙手した後話し始めた。
「クーポン券を作ってみませんか?商店街の店で使う小さいやつを。大きい買い物はしづらい商店街ですし。千二百円のクーポン券を千円で売るとか」
「ふむふむ」
虎太郎先輩はホワイトボードに"クーポン券(小さい金額)"と書いた。
「クーポン券って勝手に作っていいんだっけ?その辺どうなの?」
「プレミアム付き商品券のことな。確か役所を通す必要があったと思う」
虎太郎先輩は"プレミアム付き商品券"とクーポン券の下に書く。ゴロウはスマホを取り出し調べだす。財務局の記事を見つけて発言した。
「財務局長への登録・届出が必要と書いてある。お金はかかるのかな。多分弁護士の先生にみてもらった方が良いだろうし」
「だな。デザインもどうするか判らないもんな」
「うーん…」
「難しいんじゃないの?」
「いやあ、話題作りにはなりますし」
「そうねえ。話題作りねえ」
「話題作りは必要だと思いますよ。何も無いから人が来ないんでしょうし」
「うーん…」
とりあえずゴロウと虎太郎がプレミアム付き商品券について調べて次回また話し合おうとなった。ゴロウは虎太郎先輩と次に会う約束をして帰途についた。
冬の夜風にあたり寒さで手をジャンバーに突っ込んで歩きながら考えていた。やはり弁護士の先生に聞いた方が良いと思う。お金はかかるんだろうが。その予算はあるが、俺の提案で失敗したくない。
「ううー、さむさむ」
まだまだ寒い日は続くんだろう、空気が冷たい。今は日本全体が経済的にも冬なのかなとか思った。
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