第15話 決心

 荷物の準備をする。財布等の貴重品類、魔術に関する書類や道具、生活必需品、着替えなど必要なものは一通りリュックに入れた。写真立てのお母さんと目が合う。

 少しだけ家を空けるよ。でもきっと、大丈夫だから。

「キョーヤ、準備できたー?」

 下の階からお兄ちゃんの声が聞こえてきた。もうそろそろ出た方が良いかもしれない。リュックを背負って、玄関へと向かう。


「それじゃあ、行ってきます。手紙も送るから。」

「うん、頑張ってきてね。」


 ナオキたちと村の門の前で合流する。ミズキが警備ついでに見送ってくれるようで、俺が来るまでナオキと話していたらしい。

「あ!キョーヤ先輩!」

「お、来たね~。お兄さんとはちゃんと話せた?」

「あぁ。・・・あんがとな、あの時話してくれて。言ってくれなかったら、多分ずっと言ってなかったと思うし。」

「んぇ、あぁうん。(もう話してると思って口滑らしただけなんだけどなー。)」

「ミズキも、この村のことよろしく頼む。」

「ハイ!キョーヤ先輩たちがいない間の平和は私たちが守りますので!安心して行ってきてください!」


「おし、ナオキ、ウルニ準備できてるな。そろそろ行くぞ。」

「おっけ~。忘れ物も無いはずだし、寮生活のためのやつも全部持ってるよ。ウルニちゃんもバッチリ。」

「はい、いつでもオッケーです。」

「それじゃ、行きますか。行ってきまーす」

「「行ってきまーす!」」

「気を付けて行ってらっしゃいませ!」


「とまぁ勢いよく出てきたのは良いものの・・・。上手く教えられるかねぇ・・・。」

「分かる、ちょっと不安だよね。」

「きっと大丈夫だよ・・・多分。それも不安だけど、あたしが魔術なんてできるのかな・・・。」

 それぞれがそれぞれの不安を抱えながらリュミナテ魔術学院へと到着する。ナオキは生徒と上手く接することができるし、人気の教師になるだろうと思ってる。ウルニも、多分大丈夫だと思う。もし不安なことがあるとしたらウルニが他の生徒と仲良くできるのかというところだろうか・・・。そう考えながら、ひとまず学長先生のところまで行こうと思っていると奥から学長先生が直々に出迎えに来てくれていた。

「おはようございます学長先生。」

「あぁ、おはよう。さて、早速で悪いが返事を聞かせてもらおうかな?」

「はい。教師の依頼、受けさせてもらいます。本日からよろしくお願いします!」

「お願いしまーす!」

「あぁ良かった。その言葉を聞けて嬉しいよ。さて、ウルニくんのことも話したいことだし先に学長室へ行っておいてくれるかな。キミたちに必要な書類を持ってから私も行くよ。」

「「ハイ!」」


「そういやあたし、まだ受けれるのか分かってないのに来ちゃったんだ・・・。これで入学できないって言われちゃったらどうしよ・・・。」

「う~~~ん多分それは無いと思うけどな・・・。だってあの時も本人の記憶が無いとは言えちゃんと魔力は扱えてたし・・・。」

 ウルニとナオキがそう話していると、学長先生が学長室に戻ってきた。

「やぁやぁ待たせてすまなかった。さて、ウルニくんのことだがね。入学しても良いということになったよ。」

「ほらね。」

「なので、ウルニくんには入学をするという意思の証明をしてもらわねばならない。なのでこの後、ウルニくんには私と1対1で面談をしてもらうよ。あと書類の記入もね。それとキョーヤくんとナオキくんには・・・はい、これ。」

「これは・・・」

「教師をするにあたってのマニュアルさ。キミたちは傭兵で臨時の教師としてここに来てもらっているという事になっているのでね。ただ受け持つ授業は基本は魔術の実践訓練などが多いと思うが、座学が無いわけではないのでしっかりと読み込んでおいておくれ。」

「なるほど~・・・わぁ注意事項がビッシリ・・・。」

「先ほども行ったがキミたちは傭兵だ。生徒からも傭兵になる子たちは沢山いるだろう。だからこそ、魔術を扱うといったことの意味や危険性をよく知っているはずだ。それらをしっかりと、後輩へと教えてくれたまえ。」

「・・・はい。」

「よし、それではウルニくんと面談をしたいのでキョーヤくんとナオキくんは外に出てもらえるかな。外で待ってくれている人がいるので、その人の指示に従って動いておくれ。」

「あ、分かりました。」

「は~い。ウルニちゃん、頑張ってね。」

ギィ…バタン


「さて・・・それでは面談を始めようか。」

「あの・・・その、何をするんですか?」

「ム、あぁそう身構えてくれなくて良いよ。聞くのは1つだけだからね。とても単純だ。」


「ズバリ聞こう。キミは何故魔術師になりたい?」

「・・・え・・・。」

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