第11話 魔術出力検査
ガタンと大きく揺れる音で目が覚める。どうやら寝てしまっていたらしい。寝ぼけ目を擦り、伸びをする。
「あ、キョーヤさん起きた?もうすぐ着きそうですよ。」
「寝てた・・・。」
「なんか珍しいね、キョーヤって普段こういうので寝ること無いじゃん。」
ゆっくりと馬車が止まり、御者のおっちゃんが着いたことを伝える。パウルさんの荷物を降ろすのを手伝い、御者のおっちゃんに礼と料金を渡す。
「キョーヤさん、ナオキさん、改めて助けてくれてありがとうございました。ほら、ジークも」
「・・・ぁざした。」
「うん、2人も学院生活頑張ってね!」
バイバ~イと言いながら手を振ってジークとベルを見送るナオキ。こういうところが好かれるんだろうなと思いながら俺も手を一応振った。
「さ、俺らも行きますか。え~と学院事務室の受付に行くんだっけかな。」
「あたしもついていった方が良いですか?」
「う~んそうだな、学院見て回るためにも一緒に行くか。というかはぐれて迷子になる方が面倒だしな。」
「おっしゃー行くぞー!」
―リュミナテ魔術学院事務室受付―
「はい、魔術使用許可証の更新ですね。通知書をお出しください。」
「・・・はい、確認いたしました。キョーヤ様とナオキ様ですね。あちらの机に書き方が全て記載してありますので、それを見ながらこちらの書類の必須項目をお書きください。裏面にもチェック項目があるため、お気を付けください。」
「「はーい。」」
受付の人に渡された書類をもって案内された机に向かって渡された書類を埋める。
「書くところ多いんだよなぁこれ・・・。めんどくっさい・・・。」
「それは同感。ただこんだけ必要なんだな・・・。」
「・・・なんかいっぱい書いてある・・・。」
書き終わってから再度受付に行って書いた書類を提出する。
「はい、確認いたしました。それでは血液検査と魔術出力検査がありますので、血液検査はすぐそこにあります階段を下りて地下1階の研究室で採血、魔術出力検査は外にあります演習場にそれぞれこちらの書類を持って検査を受けてください。」
「「はーい。」」
―地下1階 研究室―
「うお~懐かし~、魔術薬の実験と調合ってここでやってたんだよね~」
「・・・ちょっと、怖いね・・・。暗いし、何となく寒いっていうか涼しいし・・・。」
書類を提出し、血液検査のために指に針を刺して小さい皿に血を落とす。
「・・・今思い出したけどさ、俺って学院時代は血見るのガチで無理だったんだよね。」
「そうだったのか?でも今こそ平気だよな。何か慣れることあったのか?」
「いや、キョーヤと一緒に傭兵になってからいつの間にか慣れてた感じかも。途中であった盗賊とかと戦う事多いし、人と嫌でも戦うから慣れちゃったのかな。」
「あぁ・・・なるほどね。まぁ血なんて別に慣れるもんでも何でもないけどな。うし、終わった。次演習場ね。」
階段を上がって外に出ると学院生が戦闘訓練のためにも使う演習場が見えた。
「ここも変わってねぇなー。まぁ数年で変わる方が変かもだけど・・・。あ、魔術出力検査に来ました。」
「はい、書類確認しますね。・・・はい確認いたしました。それでは検査用ダミーを用意いたしますので少々お待ちください。」
「はーい」
「はい、ダミー用意できました。それではいつでもいいのでダミーに向けて全力で射出型の魔術を放ってください。」
「分かりました。」
杖をダミーへと向け地面の土に魔力を流し固めて、大きなひと塊の岩にする。魔力をしっかりと岩全体に纏わせ、硬度を高めてからダミーに狙いを定める。
「突っ込め、メテオショット!!」
速度を目一杯貯めて、今出せる最大速度でダミーに向けて放つ。轟音と振動が響き渡り、木に止まっていた鳥たちが逃げていった。
「う・・・わぁ・・・。すご・・・。」
「・・・はい、検査終了です。魔術使用許可証は2日後にそれぞれの住所に送りますので、忘れないようよろしくお願いいたします。本日はお疲れさまでした。」
「「ありがとうございましたー。」」
「やっと終わったー。なんか、キョーヤの魔術出力また強くなってない?」
「何か、そうかも。でもナオキもそうだろ、別になんかしてたわけでもないのに強くなってたじゃん。」
「傭兵の任務で強くなってんのかなぁ、だったら嬉しいんだけどね。」
「そうだな。おし、ウルニ。魔術の検査してもらうぞ。学院事務室もっかい行って俺たちの先生に会わせてもらえるかちょっと聞いてくるか。」
キョーヤが事務室に行って先生に会えるかを聞いている途中にウルニがナオキと話していた。
「ねぇ、キョーヤさんってもしかしてすごい人なの?」
「おっ、ご明察だねぇ。そうだよ、キョーヤって学院時代だとめちゃめちゃ優秀だったんだよね。同世代で学院の試験があったんだけど総合でNo.2だったんだっけな。ちなみにNo.1はムギね。」
「えっ、ムギさんってそんなすごいんだ・・・。でも、そんな2人がいたのになんであの魔獣にあんなに苦戦してたの?さっきのみたいに全力で魔術を放ってたら勝ってたんじゃ・・・。」
「あー、まぁ全力を出してたら勝ってたかもね。でもそれはその魔獣一匹だけでしょ。ただでさえ倒した魔獣が急に集まって別の魔獣に変化したっていうイレギュラーだったから、もしもう一回変化を残してたり、襲撃があれだけで終わるって確信が無かったから使わなかったんだと思うよ。まぁ結局あれ以上の襲撃も何も無かったけど、それで全力を出した方が良かったっていうのは結果論だからね。」
「なるほど・・・自分たちの事だけを考えて戦ってるんじゃないんだね。」
「ナオキ、ウルニ。オッケー出たから行くぞ。」
「はーい!そういや、ナオキの成績はどうだったの?」
「俺?俺は平凡だったよ。真ん中のちょい上くらいで、得意なのは薬の調合とか実験だったな。キョーヤ達みたいに秀でた才能があったわけじゃないし、目立つこともあんまり無かったね。」
「何言ってんだ、お前も十分凄かっただろ。ムギが一番ヤバかっただけだ。あいつが戦闘も勉強も全部できてたから感覚おかしくなってるだけで、お前も成績良いんだからな。傭兵として一緒にやっててもカバーというか補助、滅茶苦茶上手いの実感するし、何よりコミュニケーションも上手だ。少なくともお前がしてることは、俺はできないことだ。」
「・・・ははっ何だよー急に。でもまぁ、ありがと。」
ナオキが少し目をそらしてぶっきらぼうに礼を言った。いつもの照れ隠しだ。そうやって昔話に花を咲かせながら学長室の前まで行く。久々に会うが、覚えているだろうか。
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