第5話 久々の共闘

 走りながら話しているうちに北門へと着き、ムギを見つける。

「ムギ!どういう状況だ!?」

「キョーヤ!来てくれたのか!門番の報告によると、北門と南門にそれぞれ20体以上の猪型魔獣が来ているらしい。南門の方にも私と同じように魔術騎士が向かっているため大丈夫だとは思うが・・・。こんなこと今までになかったぞ・・・。」


「ね~ムギ、今聞くことかわかんないんだけどさ、逆に何で今までドメルに魔獣が襲撃してきたっていう事例が無かったの?」

「む、それはだな、私のような魔術騎士がドメル周辺の魔獣が襲撃してくる前にある程度討伐し追い払っているというのもあるが、この都市全体に魔獣除けの魔術をかけているからというのが大きいんだ。そのおかげでここ10年魔獣被害やこういった襲撃は確認されていなかった。」

「それが今回急にってことね・・・。魔獣除けの魔術が弱まってたとか?」

「それは無い・・・と思いたい。毎日の確認項目に各地に刻んである魔獣除けの魔術刻印が崩れていないかというのがあるんだが、今日もそれは異常は無かった。もしそれが虚偽報告だった場合は知らないが・・・。」

 

「それよりも、目の前の魔獣に集中した方が良いぞ。いつ来るか分かったもんじゃない。」

「ふふ・・・。キョーヤたちと共に戦うのは久々だね。腕は鈍っていないだろうね。」

「知らん。ナオキとは一緒に戦ってたから完璧だけどな。」

「む・・・。まぁ、学院時代はキョーヤとは私が一番相性が良いからな!久しぶりでもすぐに思い出すだろう!」

「なんか勝手にマウント取られてる~なに~?」


 もうそろそろ動き始めるかと思い魔獣の方を向き直そうとしたとき、本来聞こえないはずの声が聞こえてきた。

「あ・・・あの・・・」

「え、あれ?何でウルニがここにいるんだ?避難所にいるはずじゃ・・・。」

「いや、あのナオキに引っ張られてきて・・・。」

「あ゛、ごめん。避難させれば良かった。何で連れてきちゃったんだろ。」

「お前何やってんだよ!?これでウルニが怪我したりでもしたら危ないだろ!」

「ごめんって~!俺がちゃんと守るから許して~!」

「当たり前だろ!何やってんだか・・・。」


「お話は終わったかい?そろそろ戦闘準備をした方が良いよ、もうそろそろ魔獣が射程範囲内だ。」

 いつの間にか魔獣が動いていたらしい。ムギが剣を抜いて戦闘準備をしている。学院時代の事を思い出し、杖を持ち直す。

「オッケー、コンビAね。2人とも上手く合わせろよ。」

「言われなくても!」

「おっけ~!ウルニちゃんはちゃんと隠れててね!」

「わ、わかった!」


 そう言うと同時にムギが地面を勢いよく蹴り、魔獣の群れへと走っていった。学院時代に共に戦っていたことを思い出しながら、土魔術の準備をする。

「まぁまぁ範囲広いけど・・・。ギリ大丈夫だろ、ムギなら残りもしっかり倒してくれる。」

「打ち漏らしてもちゃんと倒してあげるから、安心して撃ちなよ。」

 杖を構え、地面の埋まっている石に魔力を通していく。硬度を上げるために魔力を纏わせ、自分の周りに石を浮かせる。

「行くぞっ!ストーンショット!!」

 各魔獣を狙って魔力を纏わせて浮かせていた石を飛ばしていく。様々な曲線を描き、勢いよく魔獣に突き刺さっていく。着弾したのとほぼ同時にナオキが杖を構えて走り、魔力を杖に纏わせる。

「あとは頼んだぞムギ、ナオキ!」

「分かってるよっ!」

「りょうか~い!」

 ムギが剣を抜き剣に炎を纏わせ、高く跳躍する。

「燃えろっ!スラッシュバーーン!!!」

 空中で剣を横に振りぬき、炎の斬撃を魔獣に飛ばす。そして魔獣に炎の斬撃が当たると同時に高密度の炎が魔獣を燃やし尽くし、火柱が勢いよく上がった。

「切り裂け!ハリケーンリッパー!!」

 ムギの魔術があげた火柱を巻き込みながら風が魔獣を切り裂いて止めをさす。これで終了だろう。

「倒し損ねたやついない~?多分全員倒したけど・・・。」

「うん、見えてる限りは全員倒したはずだ。やはりキョーヤもナオキも衰えてない、さすがだよ。」

「警戒はまだ解くなよ、まだ何か来てもおかしくはな・・・」


ズ…


「い・・・!ナオキ!ムギ!後ろに避けろ!」

 倒した魔獣の死骸が急に動き、1か所に集まりだした。猪型の魔獣の肉がちぎれ、繋がっていく。肉の塊だったものが意思を持っているかのように動き、翼の生えた馬型の魔獣へと変わっていく。

「お、おいおい倒したはずでしょ・・・!?何で動き出すんだよ!」

「私も見たこと無いぞ・・・!どうなっている!?」

「構えろ!来るぞ!」

 獣が上空へと高く飛び上がり、俺たちへと向けて炎の玉を吐き出す。

「マッドウォール!!」

 大きな泥の壁を作り放ってきた炎の玉を防ぐ。はずだった。

「んなっ!?」

 魔力を纏わせて固めていたはずだったが、泥の壁が炎の玉の威力に耐え切れず、泥の壁が崩壊してしまった。

「おいおいおい、どんな威力してんだよ・・・!一回も崩されたことなんてなかったぞ・・・!」

「20体近くの魔獣が集まってできてるんだ!威力も防御力も段違いなはず!」

「だ、だとしたらヤバくない!?3人じゃ太刀打ちできないって!」

「だからこそ魔術を合わせるんだ!!加減するなよ。ここで倒れるわけにはいかない。防衛戦、コンビDだ!!」

「クソッしょうがないなぁ!ムギ!風補助魔法いくよ!ウィンドアシス!」

「防御は任せろ!引き付けまくってくれ!」

 増援が来るまで耐えきれるか・・・?いや、耐えるんだ!死んでたまるかっつの!!帰る場所に待ってる人だっているんだよ!!魔獣如きに倒されてたまるかよ!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る