第4話 再開、そして異常

「お~~~~~・・・。」

ワイワイガヤガヤ

 こういう光景は珍しいのだろうか、ウルニが目を輝かせながら周りを見渡し声を漏らす。

「いや~毎度のことながら賑わってるねぇ!あ!串焼き肉の出店ある!」

「待て待て待てやること終わってからだろうが。早速寄り道かい。」

「え~~~~だめ?ウルニちゃんも買ってほしそうだよ?」

「お前子どもをダシに使うなy」

「だ、ダメかな・・・?」

「お前もかよ・・・。はぁ、しょうがない1人1本な。それ食ったら探すぞ。」

「「やったー!」」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「う~ん美味い!シンプルな味付けだけど出店とかで買ったものってなんかちょっとだけ美味しく感じるよね~。」

「まぁ、分からなくもないな。うん、美味い。」

「あつっホフッハフッ」

「落ち着いて食え、ほら汚れてるから。しかし今日はなんだ、お祭りでもあったのか?賑わいがいつもより凄いというか・・・。」

「な~んか変だねぇ。城前の広場に向かって行ってる人が多いっぽいけど、英雄でも来たのかな?ちょっと気になるな。」

「人が多い方が情報も集まりやすいだろうし、そっちに行くか。面倒ごとが起きたりしてるんじゃないと良いんだが・・・。」


―城前広場―


「お~~見事に集まってんね。やっぱり人が来てるっぽい?」

「う~んよく見えんな。あ、ウルニ。はぐれないように手繋いどけ。」

「あ、うん。」

 ウルニが俺の手を咄嗟に掴む。俺じゃなくてナオキと繋いでおけと伝えたかったのだが、言葉が足らなかった。まぁいいか。


「どうする?もう少し前に行ってみるか?」

「う~~~んと・・・あ。」

「?どうした?」

「あ、やべ。気づかれた。こっち来てるよ。」

「え?何だ?」

「―っとごめんよ。少し道を開けてくれるかな・・・。あぁやっぱり!キョーヤじゃないか!!来てたのか!」

 人が目の前をどいていくと同時に目の前に現れたのは、髪を後ろで結っており、腰に剣を差している俺よりも身長が高い女性だった。そして俺の良く知る顔でもあり、あまり会いたくないやつでもあった。

「げ!お前かよ!!おいナオキ!何で言ってくれなかった!!」

「いやムギだってわかったのと同時にムギが俺に気づいちゃったからさ・・・。ごめんよ・・・。」

「キョーヤ~!ナオキも場所を教えてくれたんだろう?助かるよ~!ずっと探してたんだから!さ、早く私とバディを組んでくれたま・・・え・・・。そ、その子は・・・?」

「あ~~~~~めんどくせ・・・。ここじゃ人が多いだろ、別の場所で話すぞ。」

(・・・???)

 ウルニは何が起きているのかが全く分かっておらず、頭の上にハテナマークを3つほど浮かべていた。そして何となく、ナオキがムギと呼んだ女性が自分に対して警戒というか、少なくとも好意的でない感情を込めた目でこちらを見ていることに気づき、少し怖くなってキョーヤの後ろへと隠れてしまった。それがいけなかったのか、さらにムギの目つきが鋭くなってしまい本格的に恐怖心をウルニはムギに抱いてしまったのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 場所は変わって、広場のすぐ近くにあった酒場でテーブルを囲むように座り4人分の飲み物をとりあえず注文する。さっき広場でムギを見るために集まっていた人たちもついてきてしまっていたので、店が若干窮屈なのと刺すような目線がキョーヤへと向けられていることも露知らず、ムギが口を開いた。

「さて、場所を変えたんだ。洗いざらい話してもらおうか。その子は一体なんだ。も、もしかして私がいない間にまさか他の・・・!?」

「何を考えてんだバカ。そういう子じゃねーっつの」

「ではナオキとの子か!?!?!」

「落ち着けっての一番無いだろどうやって産むんだよ」

 こうやって話を聞かずに勝手に話を進めるのが苦手なのだ。学院で初めて会ったときはもっと冷静な奴だったはずなのだが。

「ムギぜーんぜん変わってないね~。キョーヤのことになるとポンコツになるっていうか人の話聞かないのも一緒じゃん。」

「この子は俺たちが村の近くの森で見つけて保護してるだけの子だよ。捜索依頼とかが出てないかっていうのをこっちに確かめに来ただけだよ。というかそれこそお前だってなんでこんなところいるんだよ。宮廷魔術騎士だっけ、なったんだろ?こんな場所で油売ってていいのかよ?」

「あ・・・な、なんだキョーヤの子じゃないのか・・・。よかった・・・。オホン、私はね、ちょうど魔獣討伐の依頼が終わって城に報告をしに行って次の業務に取り掛かろうとしたところね、別の魔術師というか同僚から「さすがに働き過ぎです!何日連続で働いてるんですか!!」と叱責されてしまってね。強制的に休みを取らされていたのさ。だから今日の業務は一応終わりということになっているらしくて、家に帰って食事をとろうとしたのだが食材といい調味料といいなんにも無くてね。それらの補充をしに大通りの店に行こうとした結果、人がなぜか集まってきてしまっていたのさ。」

「学院に居た時と全くおんなじことしてんね。どうせ無自覚で口説いてたりしてたんじゃないの~?」

「なるほどねぇ~・・・。ま、なんにしても食事はしっかり取れよ。戦闘も日々の健康も食事からだからな。睡眠も大事だけど。」

「キョーヤ・・・私を心配してくれているのかい・・・?」

「な~んか普通の魔術師よりは大変そうだしな~~。そこら辺にいる魔術師に頼むより確実に対処してくれる宮廷の連中に頼んだ方が良いみたいな人も多いだろうし。」

「キョーヤ、やっぱり僕とバディを組まないか?報酬だって今よりも良くなるし、私と一緒ならどんな依頼だって絶対成功する。」

「でも何日も帰れない時あるんだろ?お兄ちゃんが心配だし、やだよ。というかそれより、お前さっきウルニのこと睨んでただろ。謝っとけよ。」

「む・・・。それは・・・そうだな。ウルニ、というのかな?自己紹介もしていないのに、いきなり睨みつけてしまって本当にすまなった。私の名前はムギ。このドメルにあるマールク城で宮廷魔術騎士として務めているんだ。これからよろしく頼むよ。」

「よ、よろしくお願いします・・・。」

「そういやさ、お前もウルニのこと探してる依頼みたいな案件知らない?それを探す為にドメル来たんだけど・・・。」

「む?う~~ん、私たちの所に来てる依頼に関しては一通り目を通しているしある程度は覚えているが・・・、こんなかわいい子の捜索依頼なんて一度見たら覚えてるけどねぇ。少なくとも私は知らないな。まだ出ていないだけなのかも知れないけど。」

「そうか・・・。う~~んどうしたものかな~・・・。」

「その、せっかく来たんだ。私も手伝うから、もう少し一緒に探さないか?あと普通に買いものにも付き合ってほしいんだが・・・。」

「俺は良いけど・・・ナオキとウルニは?」

「んぇ~別に良いよ~?探しても無かったら別に俺とウルニちゃんと一緒に居られる時間が増えるだけだし、俺は別にそれでもいいし!」

「私も、大丈夫。それにせっかく来たんだし、すぐ帰っちゃったらもったいないよ。」

「じゃあまぁ・・・いいか。俺も終わったらお兄ちゃんにお土産買いたいしな・・・。」

「そうと決まれば!早速共に行こうじゃないか!」

 ムギが勢いよくコップのジュースを飲み干した後に立ち上がり大きな声を上げる。よほど嬉しかったのかステップを若干踏みながらウキウキで4人分の代金をムギが支払って店を一緒に出た。ナオキとムギと一緒にいると共に学院にいて一緒に休憩時間を過ごしていたことを思い出し、少しだけ気持ちが安らいだ。


カンカンカンカンカン!!!!!


 それと同時に警鐘が街中に鳴り響く。

「警鐘?何だ?」

「ま、魔獣だ!!街の近くに魔獣がやってきたぞー!!!みんな避難しろー!!!」

「魔獣だと!?」

 それを聞きつけたムギが咄嗟にドメルの北門の方へと走っていく。

「あっちょ、ムギ!クソッ、ナオキ追うぞ!」

「わ、分かった!」

 急いでナオキと一緒にムギを追いかけていく。


「何で都市に魔獣が来てるんだ?今までそんなこと全然無かったよな?」

「わからん・・・。というか考えれば何で今まで都市に魔獣が来てなかったんだとも思うが・・・。」

 明らかな異常事態に少し不安を抱えながら、ムギの元へと共に急いでいった。

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