第3話 一緒に散歩

「キョーヤ~!」

 朝から元気な声が聞こえる。対する俺は未だベッドの中で惰眠を貪っていた。

「キョーーヤ~~~!!」


「分かった・・・分かったから朝から大声やめて・・・。」

「あ、やっと出てきた。いつまで寝てんだよ~!」

 布団から顔を出すと、朝にしては大きくはきはきした声で俺を起こしたのはナオキだった。何故俺の部屋にいるんだ。ここは俺の家だったはず・・・。

「お前が早すぎるって・・・。まだ日も出きってないじゃん・・・。」

「早起きした方が健康に良いんだぞ?というか、キョーヤが昨日俺に生活リズム直せって言ってきたんじゃん!」

「そうだっけ・・・。忘れた・・・。」

「とりあえず早く起きて、村の正面入り口の方に早めに来てくれよ~~!ウルニちゃんも待ってんだからさ!」

「ん~・・・。」

 そう言い残して去っていったナオキだった。


「ナオキ君は朝から元気だねぇ」

「んぁ、お兄ちゃん。起こしちゃった?」

「さっき起きたばっかだけど、あんだけ元気なの見たら目覚めちゃった。朝ごはん作ろっか。」

 そういってキッチンへ向かうお兄ちゃんだった。俺の兄であり、唯一の家族であるセイガお兄ちゃん。小さい頃からお兄ちゃんと呼んでいたので、前にナオキから「お前ってセイガさんのことお兄ちゃんって言うんだな!」と指摘されたとき呼び方を変えようかと悩んだが、今更変えるのも俺もお兄ちゃんも変に感じるだろうと思って結局そのままにしている。

「用意できたよ~、ナオキ君とウルニちゃんだっけ、待ってるんでしょ?早く食べて行きな。」

 お兄ちゃんが作ってくれた目玉焼きとパンを少し急いで食べ終え、外に出る支度をする。

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「お!やっと来た!」

「おはよう、キョーヤさん」

「おはよ、昨日は寝れたか?」

「うん、バッチリ。今日はどこに行くんだっけ」

「都市に行くってか、とりあえずウルニちゃんの捜索届とかそういうのが出てないかを探しに行く感じ!出てなかったらまぁそん時はそん時で、ついでに買い物とかもできないかなーって感じでレッツゴー!!」

「ホントに元気だな、昨日ホントに寝たのか?」

「一応一緒に寝たけど・・・。都市に行くから気分が高ぶってるのかな。」

「まぁ久々に行くのもあるしな、かくいう俺も若干ワクワクというか。目的はウルニのことなんだけどな。」


 村から数分歩いて、やっと目も冴えてきたあたりでナオキがウルニに話しかける。

「そういやウルニちゃんさ、自分がどこから来たとかわかんないんだったらこの周辺に何があるのかとかも全然知らないよね?」

「うん、何も知らない。」

「え~っとね~、何から言おうかな~~~キョーヤ説明して?」

「全投げかい。説明つっても・・・う~んまぁ無難に都市からかな。今から俺たちが行こうとしてる場所がな、俺たちがいる国の名前がマールク国っていう名前で、そのマールク国の首都であるドメルっていう場所なんだ。国の特徴としては・・・なんだろ、そこまで考えたこと無かったな。学院に居た頃に習った気がしなくもないけど全部忘れてるな。」

「分かる、習った内容全部忘れてるよねぇ。魔術みたいに普段使わないからかな。」

「えぇ・・・」

「あ、思い出した。え~~っと、貿易が盛んなんだっけな。あとおっきな河が国の近くに流れてるのも特徴かな?あと大通りがいつ行っても基本賑わってるし、綺麗なのもあるな。」

「賑わってるのはあるね~、表門から入ってまっすぐ大通りがあって日によっちゃ出店とか色々あったりするね。」

「まぁ基本平和な場所って感じかな。そこだったら人も探しやすいだろうしな。」

「なるほど~・・・。」

「まぁすぐ見えると思うけど、距離はちょっとあるからだいぶ歩くことになる。疲れたらいつでも言ってくれたらいいぞ。」

「野盗とかには気を付けないとダメだけどね~。あと魔術師とか。」

「魔術師?あなたたちも魔術師じゃないの?」

「あ~まぁそうなんだけど・・・。」

「魔術師ってね~いいやつばっかりじゃないの!俺たちこそ警備とかそういう仕事を受けるだけの衛兵っていうか傭兵とほぼおんなじだけど、魔獣討伐をメインで稼いでる魔術師が居たり、酷い場合は人に向かって魔術を使うやつらもいるね。だから魔術師だからって信頼できる人間じゃないからさ。俺たちはウルニちゃん助けるためにこうやって一緒にいるから頼ってくれていいけどね!」

 魔術師にというか、職業に先入観だけで話してほしくないので言うか迷っていたのだが、それをナオキが全て包み隠さず言ってしまった。ナオキが最後に言ってくれたことは俺も同意見なのでまぁ良いかと思い、魔術師についてウルニに話した。


「お兄ちゃんの話によると30年前くらいまでは魔獣なんてのはそもそもいなかったし、魔術師自体も全然いなかったみたいだ。急に魔獣がこの世界に現れて、普通の人には討伐が不可能だから、魔術師の事が嫌いだけど頼らざるを得ないってのがかなり多いな。かくいううちの村長もその類なんだろうけど。」

「でも他の人達に比べりゃ全然マシな方だっていうよね~。前小耳に挟んだのでは魔術師が来たっていうので石投げられたり、話聞かずに攻撃されまくったっていう同業者の人もいたらしいよ。得体が知れないのはしょうがないにしても、守ろうっていってんのに排除されるってのは可哀想だなって思ったよ。」

 ナオキは悲しそうな顔をしながらそう言った。

 その話を初めて聞いたときは驚いたし、お兄ちゃんが何か被害に会っていないかと心配にもなった。俺たちの村を守っているのは全員魔術師だし、村のことを守ってはいるから感謝自体はしているらしいけど、村長が魔術師に完璧に心を開いているわけではない。それでもし俺のお兄ちゃんが危ない目にあっていたりなんかしたら俺も魔術を使って村から一緒に出て行っていただろう。お兄ちゃんは隠し事が下手だし、本人の口からそういった被害には受けていないということも言われたから、本当に被害にあっていないんだと思う。


「ナオキたちも大変だったんだね・・・。似たようなことにはあったことあるの?」

「俺はギリ無かったかな?基本なんも無かったかも。え、だとしたらもしかして運良いな俺」

「俺は・・・1回だけあったかな。そんな激しくはなかったけど結構露骨に村の人から嫌な顔されたな。依頼主には悪かったけど、嫌だったからすぐにやめた。」

「けどやっぱ同業者でひどい目にあってるやつがいるのはやっぱやだな~。やりづらくなるのもそうだけど、その人が可哀想じゃん。」

「そうだな・・・。お、見えてきたな、あのでっけー建物が見えるところがドメルだ。情報があると良いんだけどな・・・。」

 そうこうしているうちにドメルへと着きそうだ。少し不安を抱えながらも、歩を進めた。

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