永遠の時計屋

藤澤勇樹

時間の呪いと少女の戦い

ある雨の降りしきる夜、小さな町の片隅にひっそりと佇む古びた時計屋の前に、一人の少女が立っていた。


名前はミナ。


彼女の瞳には、子供らしさが失われ、早く大人になりたいという願望の代わりに、永遠の少女でありたいという切なる願いが映っていた。


「いつまでも純粋で無垢な心を保ちたい…」

とミナはつぶやく。


時計屋の扉を開け、ガラスケースに納められた数々の時計を眺めながら、ミナはふと、奇妙な時計に目を留める。


古びた金色の時計で、針は動かず、時を刻まないように見えた。


「この時計、不思議な雰囲気がするわ」

と彼女は独り言を漏らす。


店主の老人は、その時計が呪われており、針を動かすと持ち主の周りの時間だけが止まると告げる。


「私にはこれが必要なの。永遠の時間を、私のものにしたいの」

と、ミナは警告を無視して時計を持ち帰る決心を固める。


◇◇◇


時計の針を止めた瞬間、ミナの周りの世界は静止し、時間が止まった。


「ああ、私は自由よ!もう誰にも縛られない!」

ミナは最初は歓喜の声を上げる。


友達、家族、町の人々が動かなくなり、彼女だけが動ける世界に喜びを感じた。


しかし、その夜、ミナはに気づく。


「なんてこと…これが、呪いの代償なの?」

歪んだ姿、ゆがんだ顔、彼女にしか見えない影が、じりじりと彼女を取り囲む。


ミナは恐怖で震え、

「どうしたらいいの?この呪いから逃れられる方法はないの?」

と時計の呪いを解く方法を探し始める。


そして、が同じ願いを抱きながら、最後には影に飲み込まれたことを知る。


◇◇◇


影はミナの恐怖を糧に、日々、力を増していく。


「私、怖い…でも、立ち向かわなくちゃ」

と彼女は自分に言い聞かせる。


彼女は時計を戻そうと試みるが、何度挑戦しても針は動かない。


「どうして、どうして動かないの?」

ミナは絶望を感じつつも、時計屋の老人を訪ねる。


老人は厳しい表情で、時計の呪いを解く唯一の方法は、持ち主が真の成長を受け入れ、時間の流れを再び受け入れることだと告げる。


「時間は人を変え、成長させる。その価値を受け入れなさい」

と老人は言う。


「そう…私は逃げていたのね。成長する勇気を持たなければ」

と、ミナは自らの運命と向き合い、成長の意味を理解する旅を始める。


◇◇◇


ミナは、影との対峙の中で、自分自身の恐怖と向き合い、それを乗り越える勇気を見つける。


「もう怖くない。成長することが、私には必要なのだから」

と彼女は心の底から受け入れる。


彼女は、永遠に子供でいたいという願望を捨て、成長と老いの自然な過程を受け入れる。


その決意が時計の針を再び動かし始める。


時間が流れ出すと、影は消え、ミナの周りの世界も動き出す。


「私の時間は、再び動き出したわ」とミナは安堵の息をつき、改めて家族や友達との関係を大切にし、自分の成長を受け入れる。


時計屋の前を再び訪れたミナは、老人に感謝の言葉を述べ、時計を返す。


「時間は、私たちを成長させ、変化させるためにあるのだと、今はわかります」

とミナは微笑みながら言った。


そして彼女は、成長の旅を続けながら、自らの未来へと歩み出すのであった。

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永遠の時計屋 藤澤勇樹 @yuki_fujisawa

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