第5話噂と彼とメンドクサイ奴ら

 朝の6時。けたたましく何度も鳴るスマホのアラーム音をうなりながら消した。

 ずぼらな私は、学校の用意など何もしてない。寝起きで2度寝を求める脳みそをたたき起こし、準備をし始めた。

 今日は、座学しかないので、私は上機嫌になりながら、荷物をまとめる。制服に着替え、なんとなく髪を溶かす。

 菓子パンを勝手にかじり、よし!さぁ学校へ行くぞ!!と自室でカバンを背負った時、昨日読んでいた『嵐が丘』を布団に忘れたのを見つけた。

 それと同時に入部届を書いていないことに気づいた私は、勉強机のプリントファイルから住所が書いてある紙を取り出し急いで入部届に書く。その他書くとこは学校でいいだろう。

 私は、家から飛び出し、全力で自転車を走らせた。

 着いたら、急いで自転車を降り、階段を駆け上って、ホームに入り、階段を今度は1段飛ばしで降りる。今日もまた夏の残暑が猛威を振るう気配が体にする。熱いし、じとっとして汗が肌着にへばりつくのだろうと思うと少し不快になる。

 そうしてなんとか遅刻ギリギリの電車に乗った。時間としては6時30分くらい。最後の乗り換え場着が7時20分くらいで3分で乗り換え(走れ!)。学校最寄りの駅に8時5分着。8時20分までに登校。駅から学校まではギリギリだが早歩きで何とかなる。

 そうして安堵したからだろう。昨日の間遅くまで起きていたのも相まって朝早く人少ない電車内で眠り込んでしまった。

 起きたのはアナウンスで乗り換えの駅に着いたことに気づきいた時だった。急いで降りろ!さもないと遅刻が確定するぞ!なんて考えながら荷物を持って急いで降りた。

 乗り換えの電車に乗ると私の優雅な朝のルーティーンとしてクラスのSNSの確認をする。(突っ込み不在)

 これをしてかないと、学校で連絡を見ていないずぼらな奴として、冷ややかな目で見られる。怖いメンドクサイ

 その時に、1件のメールが珍しいところから来ていた。葵葉ちゃんだ。

 なになに

 「今日、いつもの乗り換え場1両目前で待っています。話したいことがあるの。」これが6時40分。

 「何時くらいになりそう?」6時50分


 「ねぇ、あんた今日寝坊してないでしょうね。」7時


 「この目の前で電車を見送る悲しさよ。」7時5分


 「気づいて!!こころーーー」7時8分


 「ちょっと、次の電車乗れないと私まで遅刻しちゃうんだけど!ここぉぅろーー!!」7時10分

 ここのところの葵葉ちゃんは…? おかしいな。もう少しツンが強めな感じで連絡なんて課題くらいだったのに………はっ!あのくーるびゅーてぃー能面が私に向かってもやもやしているだと!?

 なんだか嬉しくなってくる。これで私が男の子だったら、ラブコメが始まりそうだ。少し、どきどきする ということはないが。

 私は、蒼葉ちゃんに「ぎりの電車には、間に合わせるよ!」と送った。

 葵葉ちゃんはくまさんがパレードしているようなスタンプを送ってきた。そこまでだったのか…

 そうして、乗換駅に着くと、私は朝の階段レースの先陣を切り一番に駆け下りた。

それでも、人はごったがえしている。朝のハブ駅なのだから当然だ。

 私は、人の隙間を切り抜けるようにして、待ち合わせの電車1両目に着いた。

 そこでは、今日も可愛い葵葉ちゃんがいつもより一層ツンとした顔で待っていた。しかし、私を見つけると一瞬ほわぁとしたゆるーい顔で安堵した ように見えた見間違いかな?

 なぜなら私が走っていた足を少しづつゆるめ、近づくといつものツンとした顔でたっていたからだ。

 さっきのラブコメの事を思い出し私が出せる本気のイケボで「待たせたかな、葵葉ちゃん。」とささやくと。

 葵葉ちゃんは、呆れた顔で「ものすごく、待たせたわよ!すっご~~く待ったんだから、バカ(ここまでは可愛かった) でなんでそんな気持ち悪い声してるのキモイわよ」と言って、私を気にせず、ずかずかと電車にはいっていった、ふむ、私に女の子をくらくらさせる声は出ないらしい。

 といっても、この電車は、仲良く2人ならギリギリで座れるくらい余裕があるので

結局、隣り合って座るのだが。

 座るとすぐに葵葉ちゃんは少し顔をこわばらせたかと思うと少しうつむいて尋ねた。

「ねぇ、心、あんたがどっかの男にたぶらかされて、むかついたあまりろうと学校で走り回ったってホント?」

 私は、「なんじゃそりゃ!」と大きく瞳と口を開けることしかできなかった。

「だってだって、裏庭でけんかしてひどい罵声の応酬してたのをみたっていうクラスの子がいたし、私も渡り廊下で心が「待てー!そのままいかせるかーー!!」って追ってるの見ちゃったし、その他目撃者がいるんだけど…」と葵葉ちゃんは、いつものクールな横顔を崩し心配そうに私の顔に向き合った。

 そんな、葵葉ちゃんは、私のさっきからしていたぽかんとした呆けた顔をみると、みるみる赤くなり表情がいつものツン顔になっているが、顔の赤くなりと口元がゆがんでいる。

「その様子を見るに私の余計な心配だったようね!えぇそうですとも心配して待っていたのにただの勘違いですよ。笑えばいいわ、辱めればいいわ。 (小さな声で)あぁもうなんでこんな、くそぉ余計な心配しなければ…ぶつぶつ」

 私は、昨日の追いかけっこがそんな話になっているのに驚いていただけだったのだが、葵葉ちゃんがなんか途中から自爆し始めてもう何から話していいか分からなくなった私は、「いや勘違いじゃなくて…」というと「なにっ、やっぱり失恋したの、たぶらかされたの!!?」と再び混乱させてしまった。

 私が部勧誘の子の読み聞かせに自分の愚痴をかぶせてしまって勘違いを解くために追いかけまわしていた事を(これだけみるとひどいな)説明するまで、電車に乗車してる人から、学生の痴話話としていろいろな目でみられた。(あながち痴話話でも間違いないかもしれないが)

 その後、葵葉ちゃんから、忠告をもらった。

「いい。美術科はほとんどそうだけどクラスの子は女の子ばかりだから恋愛話なんて食い物にされるよ!しかも美術科だからか知らないけどよくわからんやつも多いから気を付けて。」

 私は、クラスで少ない(希少)、き弱な美術科イケメン男子が女の子の集団に根掘り葉掘り聞かれていたのを思い出して、車内の冷房が寒く感じた。

 寒さを感じる中、電車のアナウンスが流れ慣性の法則にしたがって体にゆっくりとした力が加わる。

「お客様に遅延のお知らせです。ただ今この電車は次の停車駅でのお客様対応の影響により遅れが生じています。お急ぎのお客様には…」

 私は、葵葉ちゃんと顔を見合わせた。葵葉ちゃんは絶望で目から光を失っていた。

 問題はここからで、遅延は4分くらいの物だった。これでは遅延切符は出ない。(普通の駅で出るのか分からないけど)

 そうして今どうしているかというと…

「葵葉ちゃん!!頑張ってーー!!!走ってー!!」もうすぐ8時となってお天道様がしっかりのぼり、暑さ、湿度共に私たちを苦しめる中、私たちは爽やかに朝の通学路を走っていた。

「ここぉろーー!なんでそんな早いのよーーー!」数メートル先から声が聞こえる。

 美術科大体の傾向として「運動が出来ない」あとは何も言わずとも。

 私は、走って葵葉ちゃんの元へと駆け寄り手に持っていたデッサン用具を持つ(持たせていただきます)。

 今日、実技がないのにデッサン用具を持ってきていることに少しの危機感を持ちつつそれでもなお朝の短距離走は私がリードした。時頼、「速っ」、とか「やばい、死ぬ」とぜぇぜぇした悲鳴を聞きながら私たちは走って学校へ向かう。

 教室に入った時には先生が出席確認をを取っているときで、私たちはギリギリ許してもらえた。(真面目な葵葉ちゃんが死にそうな顔で教室に入ってきたからかもしれない)

 朝のホームルームが終わると情報パソコン室へ移動だった。その時葵葉ちゃんが私の席を通るとき「恨むわよ、こころー」という怨嗟の声。

 これは、どこかで埋め合わせをしないとなと思いつつ私も用意を整えパソコン室へ向かった。

 この後は、いつもより葵葉ちゃんが休み時間に尋ねてくるということ以外はつつがなく午前を過ごした。

 そうして、お昼を迎えた。

 いつもは、私から葵葉ちゃんを誘うのに今日は葵葉ちゃんから誘いに来てくれた。

 教室で机をくっつけ仲良く食べる。話すのは主に私でやらかし話に私は尽きないので、それを話したり、葵葉ちゃんが落ち着いた声で最近読んでいる本のおもしろい話をしたりする。まぁ私は普段本を読まないので、面白い所を上手く抜粋してくれる葵葉ちゃんの話を楽しんで聞くだけなのだか。

 しかし、今日は思わぬ来客があった、知らない生徒がクラスにはいって「葵葉さんいますかー?お昼の放送忘れてるよー」とよびに来た。

 葵葉ちゃんはしまったという顔で「ごめん心、今日当番だった。行って来る。」と素早く弁当を片付け、ツンの中に何かを含ませながら私を眺めながら教室から出て行った。

 それからしばらくして思った。今日は来訪者が多い日だと

 私は、女の子3人に質問攻めにあっていた。

「ねぇねぇこころちゃん、男に振られて追いかけてたってホントーww」と言われる。

 私は、顔を合わさずにスマホをいじりながら「勘違いだよー」と優しく突き返す。 

 私は、人に嫌われるのが嫌いだ。だが今回は突き放さないといけないだろう。

しかし、「じゃあ、なんで追いかけまわしてたのー、そんなこと小学生でもないしww」としつこく面倒くさいのが続く。

 普段から私は明るく低い身長も相まって少し幼く見えるからだろうか一定数からかいに来る人がいる。

 しまいには、「心、あんまオシャレしないよねーww」「まだ、人の方幼稚だからー」「この会話にお前いらんからはけて(いなくなっての意味)くれるー。」とか全く関係ない話でバカにしてくる。

 うちの学校は普通科は県一の進学校なので、メイクや私服、髪染めで来ることが今年から許可されている。

 といっても、急に私服変わらなかった。

 なぜなら、この学校でそれを良く思う教師が少なかったからだ。生徒会と学校で話し合いが行われて合意にいたったらしい。(なぜ、不満の先生が多いのに通ったのだろう。)

今では、普通科は8割くらいが制服だが、あまり勉強の先生に気を使わない美術科は6割くらいが既に私服である。

 私は、自分の家庭を思い出しながら、お前らみたいに自分のお小遣いだけ気にしていたらいい奴とは違うんだよと心で悪態を吐く。まぁよっぽどこの学校さらに美術科に来ている時点で家庭の苦しみを知っている人の方が少ないだろう。

 それどころか、オシャレしていないだけで周りの目を気にしない幼稚な奴とあつかうこのクラスの美術科(それは全員ではないが)は、居心地が悪い。

 当たり前だが、むかついて来る。なんで、一部の人が受けている苦労を知らない奴にこんなこと言われないといけないんだと心が叫んでいる。しかしこれは心の中にしまって、そうしないとこのクラスの一員になれない。

 というか葵葉ちゃんがいなくなった時点で図書室なりどっかに逃げないといけなかった。…昨日のように頭に霧がたちこみ、無気力の波が押し寄せてくる。

 そうして、遂にこいつらに一発食らわせてやろうかと思った時。

 今日は本当に多い来訪者が来た。聡君だった。

女子に囲まれている私を見て、「失礼します。」と建前の挨拶をしてずかずかと近づいて来る。そこは真面目だ。

 聡君は先輩に言われて昨日の不満そうな顔で一応呼びに来てくれたのかもしれい、けど状況をみたら、面倒くさいと逃げてしまうかも。

 私は、あぁ演劇したかったのにもったいないことしたなぁと思いながら聡君の顔を見てびっくりした。

 あの聡君がにっこりとした顔で私たちを見ている。あの嫌い嫌いみたいな顔はどこ行った。

学生服を着た爽やかな、何も知らないような笑顔で。

「今日、部活の集まりがあるんだけど忘れてない?お話し中悪いんだけど借りてくね。」最後のはクラスの子に向けてだ。

それを聞いた彼女らは「あぁ、あなたが葵葉ちゃんに追いかけまわされた彼氏さん?」とむかつく甲高い声でいう。

すると、聡君はは笑顔のまま「なにそれ、誰の事?僕たち知らないんだけど。」

「しらばっくれんなよ。うちのクラスで見たっていう子いるんだけど。」男勝りだがヤンキーのような様子はないので、元々そういう口調なのだろう。

 彼の細い目が少年らしさを持ったまま見開く顔は笑顔だが目が笑っていない。

 そして、今日1番の爽やかな流暢な声で「へぇ、そうなんだ。それでそれがどうしたの?君たちは友達から聞いた自分に関係ない話をその子に問い詰めないと落ち着かないの。気持ち悪いね。それ。」と言い切った。

 三人の女どもは、笑顔の少年が急に毒舌をはいたためびっくりしているようだ。

「行こう。心さん」と聡君は私に促す。

 私は彼にしたがい立ち上がって教室を去ろうとする。

 すると、後ろから「へぇ、心。彼氏とおそろいね。イチャイチャして気持ち悪ー。」なめている私に声が飛んできた。

 わたしも笑顔で毒舌な彼にならうことにした。私はスマホの画面を出し「ごめんねー。私、あなたたちみたいに必要以上のオシャレする気がないのー。あと今の会話録音しといたから。」クラス内に聞こえる声で言ったから、今後服がどうだかといった話は私にはこないだろう。まぁただクラスで孤立しいじめられるかもしれないが、葵葉ちゃん及び多少理解者はいるので、なんとかなってほしい。

 なにより、この学校の生徒は、そこまで阿保はいない。私が、この音声をクラスのsmsにばらまいたら、批判の声の方が多くなる。あちら側も分かっているだろうし、なにより、いじめというより自分たちのコンプレックス解消にたまたま私を使っていたに過ぎない。リスクを持つと分かったらもうしてこないだろう。

 私は、そんなことを考えながら教室をでた。

 ジメジメとする廊下に太陽の光が差し込み、窓から気持ちの良い風が吹く中を彼と歩く。

 聡君は、教室を出た瞬間、面倒くさい物に交じってしまった。という、いつもの「ー」に「o」を半分に切って切り口にくっつけたような目で歩いていた。

そして彼はぶっきらぼうに言うのだった「たまにいるよな、そういうやつ。おせっかいかもしれないけど、そんな奴に交じろうとしないほうがいい、気を使わない。さっさと受け流す。いじめられる前に距離を置く、今日みたいになる時点でダメだ。」

 気が抜けた私は「ありがとう」と弱弱しく言うのだった。

すると彼は、「そもそも、最新の服とかを着てないといけないような作家にならない限り、親の金使って必要以上着飾るのが当たり前。それって作家になるために絶対ではないと思うんだ、そう思わない?」と笑顔で私を励ましてくれた。笑顔はさっきの作り笑いと違ってとても穏やかで優しい顔だった。

 そして、頭の片隅で彼が作家についての考えを持っているのか疑問に思ったのだがその笑顔で消し飛んでしまった

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飽き性な私と文学的な彼の午後の部活動 @uminokotori

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