06 Fuckin' Isekai Apocalypse Top10 2024-07-24

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01st:5910 Jonasジョナス EpsteinエプスタインZOASTゾースト

02nd:5865 最先任上級曹長さいせんにんじょうきゅうそうちょう 【在郷転生者会】

03rd:4999 Akiraアキラ OzmaオズマZOASTゾースト

04th:4998 Benjaminベンジャミン KaoカオZOASTゾースト

05th:4997 Cristianクリスチャン FernandoフェルナンドZOASTゾースト

06th:4996 深月みづきヴィクトリア 【ZOASTゾースト

08th:4649 玖珂嶋喜汰朗くがしまきたろう玖珂嶋喜汰朗くがしまきたろう山嵐蘭々やまあらしらんらん

08th:4649 山嵐蘭々やまあらしらんらん玖珂嶋喜汰朗くがしまきたろう山嵐蘭々やまあらしらんらん

09th:4522 ちてる軍手ぐんて毛玉取けだまと

10th:4505 珠洲嶋火夜すずしまかや 【Tokyo Nightbirds】


□総参加異世界:100000 □帰還予定者:12

□死亡済:55098 □破壊済:35109

□残存元転生者:9793 □残存年:75


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「……もうかなり、煮詰まってんな……」


 あのオークション会場から一夜明け。

 ショットガン配信者のおかげで臨時休校中のぼくらは、各々帰宅。

 それから昼過ぎ、用心して周の家に集まり〈天国の監獄ヘブンリー・プリズン〉へ入り会議中。


「え?」「あの……」


 あの二人から渡されたアイテムを破壊し、それぞれ二ポイント手に入れたぼくとエマは、コインも二枚ゲット。早速ランキング閲覧チケット(十枚綴り)をコイン一枚で購入。閲覧してみると……予想より進んだ状況で少し、顔が苦くなる。もう中盤戦の終わり頃、だろうか。


「…………って、なんだよ……?」


 ギルドを組んだ二人とはシステム系情報が共有できる。二人も今、このランキングウィンドウを見てるはず。だけど二人ともぼくを、信じられないモノを見る目。数学の授業中にエビフライを揚げ始めた人を見たってこんな顔にはならない、って思うぐらい。


「……こちらの、五名……ZOASTゾーストの……」

「いや別人だろ、プレイヤーネームが使えるみたいだし」


 ギルドメニューから、新異世界黙示録で使う名前を決められる。ランキングに載ってる名前が本名とは限らない……っていうか、九割方違うって考えてたほうがいいだろう。


「でも、ZOASTゾーストって……」


 そしてもちろん、ギルドの名前も決められる。ランキングの名前後方がそのギルド名ってことなんだろうけど……あー、エマがそれに気付きませんように。


「おいおい、今をときめく世界時価総額トップファイブ企業のCEOたちが全員まとめて元転生者で……それで、新異世界黙示録のトップをほぼ独占してるって……?」


 SNSと動画サイトの最大手Zoneゾーン

 AIと自動運転分野で覇権をとりつつあるO-Motorsオーモーターズ

 世界シェア七十%を越すスマホのAionアイオン

 検索とOSを牛耳るStek Softwareステック・ソフトウェア

 そして、ネット通販とウェブサービス、アナログとデジタル、両方の流通を支配しているに等しい、Total Test Techトータル・テスト・テック、通称三トン。


 この五社はそれぞれの頭文字をとってZOASTゾーストなんて呼ばれてる。ランキングのトップが、そのCEOたちの名前で埋められてたんだ。本屋を少しうろつけばこの五人の内、誰かの名前が入った啓発本、ビジネス書の類がいくらでもあるから、ぼくも覚えてしまってる。


「あの、深月ヴィクトリアと名乗った方……美しい、プラチナブロンドでしたわ……」

「身長も百八十はあった。何より声が同じだったよ。インタビューで聞いた声と一緒だ」


 ぼくは名前を知ってるぐらいだけど、二人は映像で見たことあるらしい。


「ニュースサイトで見たのを覚えてる。この五人、生まれも育ちも人種も違うが……共通点が一つ。小さな頃はまったく普通の子、あるいは少し落ちこぼれの存在でしかなかったが……」


 周がエマを見ると、彼女は頷き後を引き継ぐ。


「ある時突然、天啓に打たれたかのように、天才児となった……自伝の中では、ご本やテレビのなにげない一言で経営に目覚めた、などと書いてありましたが……」


「ちょっと待てって。地球の人口は七十億、元転生者は十万人。その中のトップ五人が、よりにもよってZOASTゾーストのCEOだなんて、そりゃできすぎってもんじゃないか?」


 ぼくがまっとうだと思う疑問を口にすると、エマはちょっと眉をつり上げて言う。


「……志郎さま……ニュースという情報伝達様式はをご存じですか?」

「ご存じだけど見ないことにしてる」

「ゲーム系のニュースサイトだってございますでしょう、もうっ……」

「ゲームニュース見るよりゲームしてた方が楽しいのに、なんでそんなもん見る?」


 永遠の謎だ。最新ゲームの情報が知りたいなら、販売サイトを見れば済むのに。


「はぁ……志郎さま、ZOASTゾーストは五社ともに、古くからある企業ではございませんのよ」

「そりゃそうだろ、アレだろ、しりこんばれー、の……べんちゃー企業……だろ」

「……つまり遅くともこの二十年、早ければ十年以内に生まれた若い企業ということです。そして……志郎さま、この新異世界黙示録が始まったのはいつですか?」

「そりゃ……二千年から……」

「ではこの五名、異世界のチカラで巨大企業を作り上げた、と考えるのが自然では?」


 ようやく、わかった。

 二人がここまで、不安そうにしてる理由が。


「……攻略の仕方、プレイスタイルの違いか」


 ぼくにもそれがようやく飲み込め、呟く。


「どういうことでしょう?」

「つまり……神さまの方の立場になって考えてみると、だ。そこまで異世界で酷い目には合わさず、そこそこの……直接的な戦いにはあんまり役立たないけど、社会では役立つようなアイテムとスキル、特に、会社を作って儲けるのに役立つやつ、それを、自分の元転生者に与える」


 ぼくは思わず立ち上がってうろついてしまう。

 考え事に熱中すると脚が動いちゃうんだ。


「社会の上位階層みたいな立場なら、新異世界黙示録でだってアドバンテージがあるはず。ホントにいるのか知んないけど、裏社会の始末屋、的なのを雇うみたいな、そういうことだってできるはず。そう考えるとこのZOASTゾーストは、内政にリードがある先発組、ってとこか」


 周とエマはそう聞くと息をのんだ。

 実際いるのかな? そういう、始末屋的な存在って……。


「一方……異世界でなるべく酷い目に遭わせて、戦闘に役立つアイテムとスキルを与え、黙示録中盤以降に地球に返す。こっちは戦闘にリードがある後発組。どれだけポイントを先行で稼がれて、社会的地位を高められようと、倒せばゼロになるんだから関係ない。これもプレイスタイルとしては合理的だ」


 ぼくは歩き続け、考え続ける。


「こういうゲームなら先発組が序盤のリードのまま勝つのがパターンだけど、そうならないようにバランスをとってるわけだ。うん……なかなか……よく、できてる……」


 そこでエマが顔を輝かせ言った。


「あ、ああ……そういうこと、ですのね……! ショップの後ろの方にございました、四桁のお値段がする変身ツールやなんでも吸い込む暗黒球など、どなたがお買いになるのかと思っておりましたが……先発組は稼いだコインをそこに使って、戦闘力を補うんですのね!」


 エマにもだんだん、ゲーム的なモノの見方がわかってきたみたいだ。


「とすると、やはり……私たちのような後発組を、いかに自陣に引き入れるかが要点でしょうか? ギルドは最大三十人、メンバー内はポイント、コイン、譲渡自由となれば……数が力となりますでしょう」

「あの深月も大佐とかいう男も、ボクたちを仲間に引き入れたかったのか……?」

「大佐、なのですから当然、在郷転生者会の方でしょう。現状トップのZOASTゾーストと談合し、どちらが私たちと交渉する権利を得るか……話し合っていたのでしょうね。あの場で外に出されたのは……そのための時間稼ぎ」


 そこでぼくは少し、ため息をついた。


「しかし……」

「どうかしたかい?」


 問いかける周に、ぼくは少しだけためらいながら答える。


「参加者は十万人。そのうち五万人以上がもう既に、殺されてる。ぼくらはちょっと……ナメてたな、このゲー厶」

「……私、まだ少し掴めないのですが……ここに表示されている数字、本当に信頼していいのでしょうか?」


 エマは不安そうな顔。まあたしかに、五万五千人が殺されてるっていうのに、世間じゃ相変わらず、異世界モノのアニメがワンクールに五本ぐらいは流れてる。


「……システム系の情報は疑い出すとキリがない上に、確かめようがないからなぁ……この世界が瓶詰め脳の夢じゃないのと合わせて、祈っとくしかない」

「どういうことですの?」

「…………中学校にショットガン男が乱入して児童と教師合わせて七名を殺害。なのに……」


 ため息。


「どこかで大火事がありました、程度のニュースしかない。SNSでだってそこまで盛り上がっちゃいない。おかしすぎるだろ」


 まったくないわけじゃない。けど、少なすぎるんだ。それこそ……


「そういうチカラを持った誰か、あるいは……そういうチカラを持った誰かが、権力を握っている……そういうことだね」


 周が言って、ぼくは頷く。


「そんな……そ……そんな、の……」


 エマが泣きそうな顔をするけど、ぼくは笑った。


「こういうこと言うと、キモオタ陰キャくんの逆張り奇才アピールって思われるだろうけどさ……ぼくは逆に、びっくりしてるよ。三万五千人、殺されてないんだ」


 案外……人間ってやつの人間性はそこまで捨てたもんじゃない、ってことなのか。もしくは、ぼくみたいなキモオタ陰キャくんが、ランキング上位には多いのかもしれない。


 エマはそれをどうとったのか、わからないけどなにやら神妙な表情になって頷く。


「そう……ですわね……ええ、そうですわ。これ以上……絶対に……!」


 なにやら闘志を燃やしてる顔。ま、そうしててくれた方がありがたい。


「……じゃあ、やるべきをやるべきだな」


 ぼくは笑って言った。


「こっちから殴りかかるべきだ」

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