07 悪い奴らは働き者
そして、〈
「おいホントにこいつらか? まだガキだぞ」
運転席の男がエンジンをかけながら、言う。
「間違いねえよ、マップで確認も済んでる。元転生者はやっぱガキが一番多いだろ、大方なんか、避難所系のチカラだったんだな」
答えるのは、バン後方で床に転がしたぼくらを眺めている、太った男。
ライトバンが、まったくスムーズに、動き出す。移動するライトバンの中、中学生三人を拉致した二人は、まったく緊張感のない口調で会話を続けてる。
ぼくは一ミリも動けない。
指の一本さえ動かせない。
どうしてこんなことになってしまったのか、必死で思い出す。
公衆トイレの個室ドアから〈
「踏ーーーんだっ!」
目出し帽の男がぼくらの前に躍り出て、叫んだ。
するとその瞬間から、一ミリも動けなくなった。喋れもしない。
ただ男が、踏んだ、と叫んで一歩踏み出しただけで、そうなってしまったんだ。
で、道に倒れそうになると男に支えられ……。
あれよあれよという間に、三人ともライトバンに詰め込まれてしまった。
この間、わずか十秒にも満たなかったはずだ。
気付くとぼくらは手足に結束バンド、猿ぐつわ、しまいには目隠しまでされた。
恐れてたことが真っ先に起きて、ぼくは戦慄した。
ぼくなりに、考えてたんだ。どんな人間、集団なら、新異世界黙示録を勝ち抜けるか。最適解を追い求めるなら、それはどんな人たちか? ……それは、いざとなれば殺人をいとわず、現代社会を自由に動ける豊富な資金力と、たしかな武力……暴力を持ってる人たち。その暴力をふるうのに、まったく躊躇しない種類の人たち。つまり……。
語尾が「じゃ」で一人称が「ワシ」のお年寄りや、氷系異能のクール美少年より現実にはいない、主人公を引き立てるやられ役のためだけに出てくるモヒカンチンピラなんかじゃなく。
……本物の、犯罪者。
犯罪で生計を立てる人。そういう人の集まり。
そんな集団が、異世界の力を持ってたら。
ぼくは恐怖した。
異世界でドラゴンに睨まれた時より、ずっと。
ハイエースを駆る、目出し帽をかぶった、実物の犯罪者たちに。
なにせ……この人たちはドラゴンと違って……悪意が、明確に、ある。
……けど、もっと怖いものがあった。主に、自分のこと。
今ぼくは……恐怖すると同時、こう考えてる。
アイテムボックスが歩いてきやがった!
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