第16話 どうして、なんで【妹視点】

【妹視点】


「どうして……、なんで……」


 誰もいない独房の中で、わたくしは1人で呟きます。

 城の地下に作られたこの独房は、周りが石レンガでできていて……非常に寒いですわ。

 身体が凍えそうで、死んでしまいそうです……。


「誰か……私を助けなさい!!」


 そう叫んでも、わたくしの叫びは誰の元にも届きません。

 虚しく独房内をこだまして、わたくしの心を抉るのみですわ。


「どうして……どうして、わたくしがこんな目にあわないといけませんの!?」


 わたくしが一体、何をしたと言いますの?

 わたくしはただ王子様に惹かれて、一緒に暮らしたかっただけですわ。

 確かに以前に、いくつかの犯罪は犯しましたけれど……わたくしは公爵家ですのよ?

 多少の粗相は許すべきではありませんの?


「ありえないですわ……、このわたくしがこんな目にあうだなんて……ありえないですわ!!」


 そうですわ、これは全て間違いですわ。

 清く正しい、偉大なる公爵家の血を引き継ぐわたくしがこんな目に遭うだなんて、何かの間違いに決まっていますわ!!


「むしろ……わたくしをこんな目にさせたのは、全部お姉様のせいではありませんの?」


 わたくしの粗相も、きっとお姉様が密告したに決まっていますわ!!

 あの性悪女、本ッッッ当に腐っていますわね!!


「わたくしよりも、お姉様を処刑するべきですわ!! わたくしはこんなにも努力をしていますし、わたくしは何も悪くありませんもの!!」


 本当にムカっ腹が立ちますわね!! 

 わたくしがこんなに苦痛を感じているのに、お姉様はぬくぬくと過ごしているなんて……考えただけで虫唾が走りますわ!!


 わたくしの潔白を証明したら、一刻も早くお姉様を糾弾して差し上げますわ。

 あの性悪女は、すべてにおいて……腐っていますもの!!


「だから早く……わたくしを出してくださいまし!!」


 わたくしは清く正しく美しく、清楚に生きてきましたの。

 わたくしは何も悪くありませんし、何も間違ってはいませんわ。

 間違っているのは全てお姉様で、悪いのも全てお姉様ですの。


 だからそれを証明したいのですけれど……。


「どうして、なんで!! 誰も来ませんの!!」


 本当に、この国には無能しかいませんの?

 公爵令嬢にして、未来の王家がこんなにも叫んでいるというのに、誰も助けに来ないなんて……おかしいとはおもいませんの!?


「早く……誰か早く、わたくしを助けなさい!!」


 わたくしの叫びは、虚しく独房内をこだまするだけですわ。

 ……歯痒く、イラつきますわね。

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