第15話 嘆かわしい【国王視点】

【国王視点】


 我は今、非常に後悔している。

 シリアルをマトモに育てられなかったことを、激しく後悔している。


「いったい何用ですか、父上」


「そうですわ、お義父様」


 間抜け面を晒し、我にそう質問を投げかけるシリアル。

 隣には同じように、間抜けな表情をしているトウカがいる。

 

「……ハァ」


 思わず、ため息を溢してしまう。 

 察しの悪い、我が息子に対して。

 あまりにも無能で知能の低い、我が息子に対して。


「……2人とも、何故この場に呼ばれたのかわからんのか?」


「ええ、皆目見当もつきませんね」


「さっぱりですわ」


「……ハァ」


 幾度目かのため息。

 そうか、我が息子は……ここまで察しが悪かったのか。


「シリアルよ、昨日はどうであった?」


「どう……とは?」


「元婚約者であるアイリスに、再婚約を求めたことを聞いておる」


「な、何故父上がそのことを!?」


 我が息子の愚行が、我の耳に入らない訳がないだろう。

 逆に問いたいが何故、バレないと思ったのだ?


「なッ!! そんなことをしましたの!?」


「トウカよ」


「お義父様、その話は本当ですの!? もしも本当だったら、私は──」


「──黙れ」


「!?」


 姦しいトウカに、思わず凄んでしまった。

 彼女にも問い詰めたいことは多々あるが、今はシリアルからだ。


「で、どうであった? 返事は?」


「……断られました」


「だろうな」


「……父上は、どうして僕が断られたと思いますか?」


「……そんなこともわからないほど、愚かだからだろうな」


「なッ!?」


 呆れる。

 まさか再婚約が受理されると、本気で思っていたとは。


「……次にトウカよ」


「は、はい!!」


「貴様……闇賭博や犯罪に加担しているな?」


「………………え???」


「とぼけるな。象牙の密売や違法薬物の売買など、重犯罪に加担していることを、我が看過していないとでも思っているのか」


「あ、あはは……いったい、何の話ですの?」


「……あくまでも認めないというのだな」


 呆れながら、騎士に指示を出す。


「我が国では貴様の行為は全て、死罪に値する。元の評判が悪い貴様でも、シリアルと婚約し王家の一員になれば、犯罪から足を洗うと思って見逃していたが……クズはどこにいっても、クズという訳だな」


「ち、違うんですの!! 話を聞いてくださいまし!!」


「連れていけ」


 騎士に連れられ、トウカはこの場を去った。


「……トウカ」


「婚約者が連れられても、貴様は止めないのだな」


「……ええ、彼女のことは愛していませんので。僕が愛するのは、アイリスだけです」


「幾人もの女と浮気をしておいて、よくもまぁそのようなセリフが吐けるものだな」


「……え?」


 似たもの同士だな。

 トウカもシリアルも。

 どこまでも鈍く、どこまでも愚かだ。


「な、なんでそれを……」


「……貴様は王家には相応しくない。本日この時を持って、貴様を王家から追放する」


「……………え?」


「連れていけ」


 騎士に指示を出し、シリアルを追い出す。

 何やら騒いでいた気がするが、もう……声も聞きたくない。


「…………はぁ」


 思わず、ため息を吐く。

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