第14話 勝ち組【妹視点】

【妹視点】


 あれから数日が経ちましたわ。

 聞いた話によりますと、王子様はお姉様と縁を戻そうとしたそうですわね。

 ですけれど、結局はお姉様にフラれてしまって、今は意気消沈らしいですわ。


「まったく、愚かな人ですわ」


 幾日か前に私のことをひどく罵り、私の前から去った人の末路がこれとは……笑ってしまいますわね!!

 見る目があまりにも無さすぎますし、頭があまりにも弱すぎますわ!!


「顔と家柄だけが取り柄なのですから、黙って私だけを見ていればいいんですのに」


 本当に愚かな人ですわね。

 普通に考えて、自分から振った相手とヨリを戻そうなんて、不可能なことですのに。

 そんなこと、ちょっと考えればわかることですのに。


「ですけれど、これで……王子様は私だけに貢ぐはずですわ」


 消沈している今がチャンスですわ。

 今のうちに少し優しく接すれば、彼のような愚かな人はすぐに私に落ちますわ。

 これまで幾度も男で遊んできた私の経験上、これは間違いないですわ。


「ふふ……彼に貢がせて、私はこれから一切の努力もしないで済む人生を送る……。お姉様、あなたとは違って、私は勝ち組の人生を送りますわ!!」


 容姿も淡麗で家がらも良い。

 こんな私が財力や自由まで手に入れてしまうのですから、世の中というものは本当に不公平ですわね。

 お姉様のように容姿が優れない人が、可哀想に思えてきますわ。


「……失礼します」


「あら、なんですの?」


 今後の薔薇色に染まった人生を想起していますと、ノックと共に侍女が部屋に入って来ましたわ。


「……トウカ様、陛下がお呼びです」


「お義父様が?」


 あら、唐突ですわね。

 いったい、何の用事でしょうか?

 

「……あ、わかっちゃいましたわ」


 私の聡明な頭脳は、1つの答えを導き出しましたわ。

 なるほど、そういうことですの……。


「ふふ、早速結婚ということですのね!!」


 まだ王子様からプロポーズは受けていませんが、少し早めの結婚の挨拶というわけですのね。

 ふふ、王子様は意気消沈と聞いていましたが、案外大丈夫そうですわね。

 私をお義父様に紹介してくれる程度には、問題なさそうですわね。


「……バカな女」


「え、今何か言いました?」


「……いいえ、何も」


 まぁ、いいですわ。

 こんな矮小な侍女に構っていられるほど、私は暇ではありませんから。


「さぁ、さっそくお義父様のもとへ向かいますわよ!!」


「……はい」


 楽しみですわね。

 なんて紹介されるのでしょうか。

 もしかすると……最愛の相手なんて言われるんじゃないですの!!


「……今のうちに甘い夢を見るがいいです」


「え、今何か言いました?」


「……いいえ、何も」


 ぶつぶつとつぶやいて、気持ち悪い侍女ですわね。

 挨拶が終わったら、さっさとクビにしてやりましょう。

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