第13話 わかっていた結果【第二王子視点】

 なんてバカな兄なのだろう。

 彼の弟として、王位継承者の資格を持つものとして、実に恥ずかしい。

 

 女心をわかっていない……なんてレベルじゃない。

 人の心を、まるで理解できていない。

 相手の嫌がることを平気で行う、中等部の学生以下だ。

 

 普通に考えれば、わかることだろう。

 浮気をしておいて、謝れば済むとでもおもったのか?

 仮にそうだとするならば……救いようのないバカだな。


 

 いや、そうか。

 僕の兄貴は、そもそも救いようがないか。

 浮気をして、さらに婚約者の妹と婚約するなんて、救いようがなければ、行わないだろう。

 

 神はきっと、悪ふざけのつもりで兄を作ったんだろう。

 王家に相応しくないような人物を王家にすることが、おもしろいとでもおもったのだろう。

 神というものは会ったことがないけれど、心底性格が悪いな。


 

「……ふさわしくないな」


 失恋し、うんだれる兄の姿を見ながら、つぶやく。

 こんなにもメンタルが弱く、こんなにも意思が弱い人物は王家にはふさわしくない。

 ずっと前から思っていたことだけど、今改めてそう思った。

 

 ……いや、王家に相応しくないどころの話ではない。

 人間として、彼は相応しくない。

 浮気をするなんて、人として腐っている。

 それが一度や二度ならば、まだ情状酌量の余地があるけれど、彼の場合は……両の手では足りない数の浮気を行なっている。

 擁護することも、到底叶わない。


 ……彼を更生させることは、きっと不可能だろう。

 謝ったということはかれなりに反省をしているのだろうけれど、きっとまた再犯する。

 クズという生き物は、一度謝ったり反省しても……本当の意味では反省はしていないのだから。

 

 おそらく、あと一ヶ月もすれば、彼はまた浮気をするだろう。

 そして……あとはこれまで通りクズな行為を繰り返す。


「……今回の件は、父上にも伝えておこう」


 父上も兄のことは、あまりよく思っていない。

 若さゆえの誤りとして片付けるには、彼は罪を重ねすぎたのだ。


 今回の件を父に伝えれば……彼はきっと、つらい思いをするだろう。

 よくて説教、悪くて……追放だ。

 いや、もっと最悪なことは……処刑だろうか。


 ともかく、彼に良い結果は待っていないだろう。

 つらく酷い……そんな未来が、彼を待ち受けていることだろう。


 だがそれも……自業自得だ。


「? どうかしたのですか?」


「あ、ううん。なんでもないよ」


 キョトンとした表情で、僕を見つめる最愛の人。

 ……彼女を泣かせた兄は、絶対に許さない。


 何があっても、絶対に。

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