第4話 望んだ結果との乖離【妹視点】

【妹視点】


「……はぁ」


 自室の机に突っ伏し、本日何度目かわからない、ため息を溢します。

 

「……望んだ結果と、あまりにも違いすぎますわ」


 私が望んだ生活は、優美なものですわ。

 朝はお茶会、昼は他の貴族とのたわいもない談笑、夜は王子との談笑。

 そんな生活を望んでいたのに、現実は……あまりにもひどいですわ。


 朝早くから座学、昼からは剣術と馬術、夜にも座学。

 優雅さのカケラもない、苦しい生活です。

 

「……なんで、私がこんなに苦しまなきゃいけませんの?」


 私がいったい、何をしたと言いますの?

 私はただ、優雅に暮らしたいだけなのに。

 ……そんな普通の願いも、私はのぞんではいけませんの?


 今では寝る時間さえも、ほとんどありませんわ。

 お稽古や勉強に時間を吸い取られ、プライベートの時間も皆無です。

 以前までなら色々な人と遊んだりして、とても楽しい生活を送れましたのに。


「……前までの生活が懐かしいですわね」


 学院に通って、仲のいい学友と遊んだり。

 ちょっとアブナイ遊びに夢中になったり。

 色々な遊びを経験することができましたわ。


 中でも、草を燃やして臭いを嗅ぐという遊びが、一番楽しかったですわ。

 あの遊び以上の快感は……私の人生史上、未だに出会えていません。


「……でも、もうあのころは戻ってきませんのよね」


 輝かしいあのころは、二度と戻ってきませんわ。

 悔しいですけれど、それは間違いなく。


「……そうですわ、お姉さまが悪いんですの。最初に婚約者としての厳しさを説いてくれていれば、私が婚約者になることなんてなかったんですわ」


 無性に腹が立ってきます。

 

「昔からそうでしたわ。お姉さまは大事なことを言ってくださらず、結局苦労を背負うのは全部私。私って……なんて可哀想なのかしら」


 ため息がこぼれますわ。

 

「そうですわ、私がもっと偉くなったら……お姉様を処刑いたしましょう。私に危害ばかり加えてくるようなお姉様は、いずれこの国の脅威になりますわ」


 自分で言うのもあれですけれど、名案ですわ。


「いいえ、むしろ……今のうちに王子に告げましょう。お姉様が私に行ってきた、全ての罪を話しましょう!」


 私がどれだけ苦労をしてきたか、それを話せば王子様もきっと理解してくださりますわ。

 そしてきっと、お姉様の処刑の手伝いをしてくださるに違いありません。


「ふふ、楽しみになってきましたわね!」


 口角が自然と上がりますわ。

 私が不幸な人生を歩んできたのは、全てお姉様のせいですもの。

 

「お姉様、因果応報って言葉をお存知ですか?」


 ニヤッと笑みが溢れて、私は嬉しい気持ちに包まれますわ。

 早速ですけれど、明日王子様に告げましょう!

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