第5話 『小説』と『ネット小説』

 四月になりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。


 今回は『小説』と『ネット小説』の違いを比べてみようかなどと思っています。どちらも同じものじゃないかと思われるかもしれません。確かに、ある意味では同じものです。が同時に、ある意味では違うものです。


 私個人は小説という大ジャンルの中にネット小説という小ジャンルが存在しているのだと考えています。


 ある時、ある方が言いました。


 ホラーは小説という媒体には向いていない。


 細かい部分では違ったかもしれませんが、だいたい上記の通りの主張だったはずです。


 さて、ホラーは小説という媒体に向いていない。なんてことはありません。むしろ私は、ホラーは小説向きのネタと思っています。また、最近ではネット小説でもホラージャンルは勢いを増してきているように思えます。とはいえ、です。


 おそらく『ホラーは小説という媒体には向いていない』と語った方は正確には『ホラーはネット小説という媒体には向いていない』と語りたかったのだと思います。まあ私から言わせてもらえれば後述した論も間違っていると思いますが、論が正しいか間違っているかは一度置いておきましょう。


 皆さんは気にならないでしょうか。なぜ、あの方はホラーがネット小説に向いていないなどという論を語ったのか。これは完全に私の憶測になってしまうのですが、ネット小説といものの特殊性が、あのようにおかしな論を出させてしまったのではないでしょうか。


 ハッキリと言っておきます。ネット小説はこれまで小説と呼ばれてきたものと比べると特殊な進化をしてきたものです。どちらが優れているとかそういう話ではなくて、ネット小説は少々特殊なものであると考えて欲しいのです。


 ネット小説は元々は個人がブログで公開していたようなものだったのだろうと思いますが、そのうちランキング形式のサイトが生まれ、書籍化される物も現れます。そうなればよりランキングに昇りやすい物、より書籍化されやすい物が研究されるのも自然なことです。


 ネット小説の世界ではより分かりやすく、よりスピーディーに読まれるように文章の流行りが移り変わっていったように思われます。全てがそうとは言いませんが、そのような傾向はあるのではないでしょうか。


 また、ネット小説の世界では流行りのジャンルというものも現れます。いわゆる異世界ファンタジーや、一時期のVRMMO、最近では悪役転生や現代ダンジョンなどが当てはまるでしょう。


 そして、かつてはホラーというジャンルはネット小説ではランキング入りや書籍化を考えた時に不利なジャンルであったとは思います。


 ホラーは小説という媒体には向いていない。


 このような論は、かつてのネット小説という狭い界隈を語るのであればおかしくはないものだったと思います。


 最近ではホラージャンルの作品を募集するコンテストも盛んですし、ネット小説の世界からホラー作品が書籍化することはよくあります。


 これもまた私の勝手な憶測ですが、かつてライトノベルと呼ばれていた物が一般文芸との境界があいまいになっていったように、ネット小説も他の小説との境界はあいまいに変わっていくように考えられます。あるいはすでに曖昧になり初めているのかもしれません。


 ですが、まだ小説とネット小説は別のものとして考えていたほうがいいのではないかというのが私の意見です。


 よく『小説』という言葉を使ってネット小説という狭い界隈のことを語る人が居ます。きっと私にもその傾向はあって、人というものはついつい自分の居場所を中心にものを考えるところがあるように思われます。私も、いつも気をつけなければ。


 人が何かについて語っている時、それが広い範囲に当てはまるのか、狭い範囲にしか当てはまらないのか、しっかりと考えて判断するべきです。また自分が何かについて語っている時、それが広い範囲に当てはまるのか、狭い範囲にしか当てはまらないのかも、意識できていると良いですね。


 ところで今回私は小説とネット小説について比べてみると言いましたね。では、ひとつ比べてみようと思います。それは文章を書き上げてから反応が帰って来るまでの時間です。


 当たり前の話ですがネット小説は作者が文章を投稿して掲載された瞬間から読者の目に届くことになります。その反応はポイントやいいね。ブックマークやフォロー、感想といった形で作者に届きます。


 対し、小説を書いて、それを公募に応募するとします。あるいは書籍を発売する場合を考えても良いでしょう……私は書籍を出した経験はまだないのですが……公募にせよ書籍の発売にせよ、読んだ人間から何らかの反応が返ってくるまで数ヶ月から年単位の時間がかかることかと思います。


 私の勝手な考えなのですが、これまでの小説と、現在のネット小説の違いの中で最も大きなものは、この読者の反応が現れるまでの時間なのではないでしょうか。時間の差によって作者が試行錯誤をする機会が多く発生し、ネット小説という文化は十数年~二十年? 程度の間に高速で変化を続けられたのだと思います。そうして、ネット小説は独特の文化を発展させていったのでしょう。


 すぐに読者の反応が現れることからネット小説特有のランキング文化が出来ていき、同じくネット小説界隈の独自の文化ができていったのではないでしょうか。


 今回の話はいつも以上に憶測まみれでしたが、呼んでくれた方には楽しんでもらえたでしょうか。また機会があれば何か語るつもりです。


 それでは、またいつか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る