-10000・主よ

懐かしい音...

草木の揺れる音。

けど海のようなあの静かさも今となっては恋しい。


『待ってー!父さーん!!待ってー!!』


後ろから少年の声が聞こえる。

その瞬間僕は、近くの木に隠れる。

直後に横を少年が走った。元気に昔の私の様に。


その少年を目で追うように見ているとそこは


『わ...私の家......家に入った.....?』


少年は私の家に入った。

さらに、家から大きな二つの影が見えた。


『キサ!そんなに慌てると転けるわよー!』

『父さん逃げないから、ゆっくりでいいよー!』


子供の両親だろう...両親...?


『......あ。』


その両親たちは、と知らない男だった。


『ぇ。』


子供は、親にギュウー...と包まれた。

あれは家庭で、親の愛情、私にはない物。

もう忘れた物。


『 』


僕 は も う 僕 に は な れ な い 。


悟った。その景色に。その空間だけで私は悟った。

あれは私の子供で、妻はすでに再婚していた。

僕と言う人格は死んだ。


『----』


これが運命。残酷の塊。


|今の私にできるのは|


|僕の存在を知らせないことだ|


私は、目の前の海の地平線が歪んで見える。

溺れているかのように、景色がよく見えない。


『けれど運命は決まった!私は海へ戻る!!』


『ザッ!ザッ!ザッ!!』と力強く砂を蹴り走る。


二度と歩く事のない道を踏むたびに噛み締める。

私に悔いている時間は


決っしてない!!


『いたぞ!昨日の化け物だ!!海に帰ろうとしてるぞ!!』

村人たちたちも必死になって目の前の化け物を追いかける。


『...ぬしよ!今から私もそちらへ参ります!!』


『悪魔が!海に入るぞー!逃すなー!!絶対に殺せー!!』


村人たちが私の後ろで叫んでいる。


『いくら叫んでも、私を捕まえる事はできないぞ...』


しかし、叫びの意味がわかった。


『はっ...』


目の前の沖に大量の漁船が、特殊な網を下ろしていた。


『こ、これでは逃げれな...い。しかもあの縄はガラスが付いているではないか!』


私は鱗がないと泳げないなのだ。もし鱗がガラスに引っ掛かった場合

私は確実に死ぬ。


『やっと追い詰めたぞ!この化け物め!お前は厄災を呼ぶ悪魔だ!!!』


戸惑っている間に私は囲まれてしまった。


『...お前たち何か忘れていないか?』


『シラねぇ!!とにかくお前はこの場で死ねぇー!!!』


『困ったな...もう一人、海には悪魔がいるのにな!』


|バッコーン!!|


『悪魔様の登場だぜぇー!!わかってんだな!!オレの事!!』

『忘れるわけないだろ!!ワニ野郎!!!』


海からエッセがきた。


|バキバキ!!キィ!ギィ!バン!!|


エッセが慣れた手つきで船たちを噛み切る。


『あ、あいつヒレを切って死んだはずじゃないのか!?』


『地獄からの復活よぉ!!お猿さんたちはぁ〜全員ここでブッ殺して殺る!!』


エッセはあの時の目に変わった。獲物を殺す時のハンターの目に。


『ザッバン!バギィ!』とエッセが海を飛び船の上を飛びながら人を噛み殺す。

今のエッセは、神殺しのサメだ。


『オレは海だけじゃないんだぜぇ!!お前らみたいなバカと考える事が少ない社会

 のクソ共は!!もう一回オレのクソにしてやる!!』


『や、やめ...バキ!』と海に飛び込んだ人も次々食い殺す。


『な、なんと言うばけ...バキ!!』エッセはとにかく人を食いこす。


『はは!血の味は!!ゲボだな!!俺は人じゃないから法無しで人殺しダァァ!!』


エッセは沖で大暴れしている。

一方砂浜にいる村人たちは海の光景に呆然としていた。


『おい!縄を切ったぞ!!早く深海に行け!!』

エッセは片目だけ昔よく見た眼差しで私を見た。


『...ああ!!ありがとうぉ!!エッセ!!さようなら!!』


『今世でまた会えた事に感謝だぜ!!次はあの世だな!!』


私は音速で泳いだ。


































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