6・法螺の音

もう銛もいらないな...私はなぜ銛を持ってきたのか。

それは自分を守るため。けど今の私はもうだ。

自分にかまっている場合ではない。


『サメ、すまないが,,,ヒッガ村を知っているか?』


サメは少しニヤリと顔をあげ、後ろを向いた。


『....お目覚めの様だな....ついてきなァ。オレの後ろを』


『ドッゴーン!...』と水を切りサメの後ろは泡で真っ白だ。


私もサメに負けんばかりに、水を蹴りサメの隣に行くまで泳ぐ。


『さすが、元王だな。』

(イセエビに頼まれたからな...王を元に戻してくれってな...)


しばらくサメの横を泳いでいると...綺麗なサンゴ礁や

綺麗な魚たちが私たちの下で一つの街の様に栄えていた。


『とても綺麗だな...私もまだ海にいたいな...』


その景色は、とてもとても綺麗だった。

踊る熱帯魚たち、餌を運ぶ魚、集団で大移動する魚たち

求愛を求める魚、岩陰に隠れる魚。色々いた。


『ラナー...すまないな...私が死んでいる間に子供を任せて....』

と大きな大きな海の中でつぶやいた。


『さぁ、もうそろそろだぞ。お前の言ってた島だ。

 昔ここの漁師になんかいも釣られたな...まぁその島出身奴が

 今隣にいると思ったら不思議だな。』


だんだん下から砂地が見える。

もうすぐで陸だ。


『...じゃぁオレはここでさようならだな。

 もうオレの顔は忘れておけよ...お前ならできる...元気でな』


サメはそう言って、帰路を変え姿が見えなくなった...


『...ありがとう......お前はもっと前だったな

 久々だったな...本当に本当にありがとう。』


エッセは、私よりもっと前にビキニ湾で素潜り漁中に

水素爆発の被害で死んだ私の良きライバルだった。

とにかく勝つのが好きな貪欲さの男だったが

正義感溢れる男でどこか優しい男でもあった。


『...妻よ、子供よ、もう少しで帰るからな』


ザァー!ザァー!と浜辺から波の音がする。

私は久々に故郷に戻った。


昨日も、この島に来たが今の私にとっては

少しだけ長い旅だった。


『...ラナーはどこにいるんだ。子供は...』


浜辺をゆっくりゆっくり一歩一歩歩いていく。


ザッ!ザッ!と歩く。


『家は、この当たりだった...あの家だ。』


家を見つけ我が家に向かって歩く。

歩くたびに私の脳内に走馬灯が走る。

すると


サワ!ザワ!と草から何か音がした。













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