第113話渚ちゃんの謝罪と感謝。

心春ちゃんに感謝された新葉。それでも、新葉は完全に否定する。それを心春ちゃんはそんな事は無いと言う。心春ちゃんにとっては感謝しかない様だ。けれども、新葉に取っては心春ちゃんこそ、感謝したいのだ。何故なら、樹君を信じてずっと、支え続けている。樹君の本当の優しさを誰よりも知っている。それに比べて、新葉は表向きに見える樹君だけを見て来た。友達になるのも嫌だった時期もある。樹君がこんなにも人の為に動ける子だとは思っても見なかった。こんなに気付く子だとも思っても見なかった。思えば、お兄ちゃんもそうだった。あんなにも優しいお兄ちゃんだったのに何故か学校では嫌われていたのだった。お兄ちゃんは人には優しさが伝わらなかったんだ。それを知っている新葉は樹君に対してそれを気付くべきだった。お兄ちゃんに似たような性格だと思っていたにも関わらず、それを知ろうとは思っていなかったのだ。


「僕はそんな事を言って貰える事などは何もして無いんだ!」


新葉は感謝されている事を躊躇っている。


「新葉君。樹君が素直でいられるのも大人しくなったのも人と仲良く出来る様になったのも皆んな新葉君に会ってから何だよ。私が一番知ってるの。だから、私は新葉君に感謝しているんだよ。本当に有難うね」


心春ちゃんは新葉に感謝するだけ感謝するとその場から離れて行った。四人が新葉の元を離れてから、暫くすると、渚ちゃんだけが僕の元へと帰って来た。


「どうしたの。渚ちゃん?」


新葉は戻って来た渚ちゃんに驚き、声を掛けた。


「新葉君。あのね。ごめんね。私ずっと、新葉君に無茶を言って来てしまったね。出来ない様な事でも頼んじゃったものね。私ね。新葉君を信じてたんだ。新葉君なら、何でも出来るって、そのせいなんだよね。感謝されても、他の人のお陰で自分は何も出来て無い。やれて無いって思わせちゃったんだよね。十分過ぎる程、新葉君は活躍してくれているのに私のせいでそう思わない様にしちゃっているんだよね。本当にごめんなさい。そして、私からも有難う御座います」


渚ちゃんは精一杯の感謝の言葉を述べた。

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