第106話陽翔君の過去。

陽翔君は自分の過去を話始めた。思い出すのも苦痛な様だった。その母親は兄弟の兄から奪い取った子犬を投げ捨て、弟の方を怒り続けるのだった。『キャイ〜ン』子犬は恐怖に震え、弟も怯え、兄は黙ったまま立ち竦んでいた。それを見た陽翔君はとても悲しくなった。自分を見ている様だった。陽翔君の家でも、兄と比べられる。兄は何でも優秀。弟は何でも劣っている事を比較されて来た。目の前で行われている行為はまさしく自分を見ている様で胸が締め付けられる様な思いだった。だが、目の前で見ながらも何も出来なかった。ただ、耐えるしか無かったのだ。そんな時の事だった。


「叔母さんが心配する気持ちは分かる。けど、その子も叔母さんと同じ位子犬の事を心配したんだ。迷子になったのもその子達だけのせいにしてもいいの? 兄弟をそんなに比較して育ててもいいの? 叔母さんこれ以上子供の前で晒さない方がいいと思うよ!」


「何て生意気な事を言う子なの。ほら、二人共家に帰りますよ」


と、母親は一言吐き出すと子供二人を連れて過ごすごと家へ帰って行った。それを見て、陽翔君は何かスカッとした。胸の支えが降りた気がした。その少年とは朝陽君だった。大人を相手に駄目な者はダメとはっきりと言える子供。カッコいいと思った。陽翔君にとってのヒーローだった。眩しかった。この時、この子と友達になりたいと思った。


「僕はね、あの日から、君と友達になりたいと思っていたんだ。だからね、将磨君。陽斗君。壱平君が羨ましいと思ったんだ。君が新葉君が転入式の時に困ってた時、直ぐに手を貸しただろう。やはり、君は全然変わって無いと思ったよ。新葉君と直ぐに仲良くなったね。僕は新葉君達がとても羨ましいと思ったよ。僕もその仲間に入りたかった。これが僕の本音だ。その中に君達二人が入って来て欲しい。あの二人は手放さない。信じて欲しい。君がそう言う子だから、今度の件も君が関わっていないとは思えない。何があるんですか?」


陽翔君は足を進めながらも、朝陽君の行動を探った。

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