第104話杉浦先生の行方と樹君の追跡。

朝陽君が学校を早退した後を陽翔君が早退して追っていた。朝陽君が早足で向かっている。それを上回るペースで陽翔君が朝陽君を追って行く。二人が向かって行く先は樹君の家だった。二人の距離は縮まり、朝陽君の姿が見えるまでになった。


「朝陽君。待ってくれ。僕も一緒に行くよ!」


「はっ、何で陽翔君がいるんだ。まだ、学校だろう。学校はどうした?」


「それを君が言うのかい。君こそ、病気か何かで早退するんだろう。担任の先生が不在な今、クラス委員長の僕が面倒を見るのは当然な事だろう。だから、僕が家まで送って行くよ!」


「生徒が学校を早退してまでもする事ですか?」


朝陽君は陽翔君を止める。


「それを言うなら君も同じだろう。樹君の所に行くのに早退する事でも無いだろう?」


陽翔君は言葉で言い返す。


「!」


「バスが来た。さあ、乗ろうか?」


二人はバスに乗り込み、現地に向かう。揺れるバスの中でも、二人はダンマリを決めている。バスから降りると、二人は樹君の家へと向かった。


「陽翔君は何故僕の後を追って来たんですか?」


「君だけじゃ無い。樹もクラスメートの一員だ。困った事が有れば、僕は面倒を見る必要があり、君達を支えるつもりだ。なあ。朝陽君。僕達の仲間に入らないかい。陽斗君も壱平君も君達二人が僕達の仲間に入る事を望んでいるよ。入って来いよ!」


陽翔君は改めてもう一度誘った。


「何故僕達を気にするんですか? 陽翔君の周りには沢山の友達がいるじゃ無いですか? そんなに気にします。僕はその気にさせた陽斗君と壱平君を途中で切り捨てる様な事をしたら絶対に許しませんよ!」


朝陽君は陽翔君に釘を刺す。


「おー。怖いな。朝陽君の友達を簡単に切り捨てる様な事をする筈が無いだろう。僕は逆に捨てられたらどうしようと思っている位だ」


「陽翔君。戯れるのは辞めてください」


「いや、本当の事だよ。君達から嫌われるのは嫌だからね!」


「どんだけ欲張りなんですか? そんなにクラスメート全員に好かれなくては気が済まないんですか?」


「そうだな。僕は欲張りだったんだね!」


陽翔君は照れくさそうな顔をしていた。

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