第103話朝陽君が動き出す。

杉浦先生は生徒達との会話が終わると教室を出ようと歩き出す。その時、樹君が前に乗り出し、先生の名前を呼び止める。


「杉浦先生! 何を隠しているんだ?」


「樹どうした⁈」


杉浦先生は歩き出した足を止めて樹君に聞く。


「隠している事は分かっているんだ。何を隠してるんだって?」


樹君は喰らいつく様に言い放った。


「樹。まあ、少し落ち着け、私は隠している事など何も無いぞ。何を心配しているのかは知らないが、私には全く分からないぞ? 特に何か無いのなら、私はもう行くぞ!」


杉浦先生は樹君のそれ以上の質問が出ない為、歩みを進めて教室を出て行く。


「ちっ」


樹君は不服そうに声を発した。クラスメート達は一斉に樹君に注目をした。と、同時にクラスメートはガヤガヤざわ着いた。朝陽君が樹君に睨み付ける。樹君は瞬時に静かになる。


「あいつやっぱり、本性出したよな!」


「元からの性分ってのは直様直る訳じゃねえツーの!」


「そうそう。今まで落ち着いていたのが良く出来ましたって感じだよな!」


「分かる〜」


「ハハハハハはははは」


何も無かった様に次の日を送る。次の日も次の日も杉浦先生は教室で授業をしに来た。所がある日突然、杉浦先生は学校を休んだ。病気なのか、用事なのかクラスに理由を知らせる連絡は無かった。なので、何故杉浦先生が休んだのか誰も知らずにいた。同じ日、樹君も学校を休んでいた。休んだ日も偶然一致だった。この日、クラスメートの中で憶測の無い噂が流れていた。この日、朝陽君が動いた。早退したのだ。学校には何て言って、帰ったのかは誰も知らないが、学校を早退したのは確かだ。そして、その後を陽翔君も追う様に早退するのだった。


「皆んな悪い。僕も早退させて貰うわ⁉︎」


陽翔君はそう言うと、学校を出て行ってしまった。残されたクラスメート達は呆然としている。それから、我に帰った様に口口に騒いだ。


「どう言う事?」


「誰か分かる?」


「どうなってんだ?」


「わかんね〜」


と、まあこうなるよねー。僕も全く訳が分からなかった。

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