八色運動会⑹

第89話誰に頼まれたんだ。

樹君は散々言われてしまった。全く、影響力が無くなってしまっていたのだった。樹君は愕然としていた。何も出来ずにいる自分に腹を立てていたのだ。その上に仲間である筈の新葉や壱平君と陽斗君の二人に何もするなと釘を打たれてしまった。これでは何の活躍も出来ない。力にも慣れない。不甲斐ない自分に苛立った。苛立つ自分を掻き消す様に朝陽君達の元へと走った。何も考えていないまま朝陽君の側まで来てしまった樹君。

「おい、朝陽」

「樹君。あなたがどうして来たんですか？ 誰かに頼まれて来たんですか？」

「なの、どうだっていいだろう！ 俺が会いに来ちゃあわり〜のかよ！」

「あなたが来るなんてどうかしてる。一体誰に頼まれたんだ⁉︎」

「お前、ごちゃごちゃ言い過ぎ、誰にも頼まれてねーよ！」

「ああ、そうでした。良く考えて見れば、君に頼む筈が無いか！」

「それ、どう意味だよ⁉︎」

「こっちの話です」

「で、頼まれて無いなら、僕に何の様です？」

「お前を俺の友達にしてやる」

ボソっと樹君は口にする。

「今、なんて？？」

「あー。だから~。お前を俺の友達にしてやるってんだよ！」

「ぶっ。ハハハハハハハハハ。そう来ましたか？」

「何が笑いてんだよ！」

「いやーいやいや。これは失礼しました。君が僕と友達になりたいとか言うから、つい吹き出してしまいました。くっふふふふ」

「ムカッ。また。笑ってる。ってか、お前ってさー。俺の事、怖いとか思わねーの。最初の内は口も聞けない程、ビビってたじゃねーか？」

「全然」

「あの二人もそうなんだよな。今は俺の事全然怖くねーんだってよ！」

「言われて見ればそうだね。何故だろう。こうして普通に話している。おかしいね？」

「そんな事はどうだって良い。お前はあいつらとは仲直りしねーのかよ。ずっと仲が良かったんだろう。あいつらがお前を見捨てて、陽翔と仲良くしようと思っている訳じゃ無い事位お前だって分かっているんだろう。陽翔と友達になれて有頂天になっているだけだってよ。なあ、許してやれよ」

樹君はこの時、まともな良い事を言っていた事を朝陽君と将磨君の二人しか知らない事を知らずにいた。