第59話キャラ弁。

一斉に開けた弁当箱に一声を上げたのは陽葵ちゃんだった。


「あー。美味そー!」


陽葵ちゃんは弁当を見て喜んでいる。それもその筈、歩いて走ってクタクタだ。ぺこぺこだ。皆んな、お腹が空いている。


「えっ。皆んなキャラ弁。私だけ普通弁なの~!」


陽葵ちゃんが他の子の弁当を見て、がっかりしている様だった。


「キャラ弁じゃ無くても美味しそうじゃ無い。栄養も有りそうだし、ね!」


結愛ちゃんが言った。だが、陽葵ちゃんにとっては納得行く物では無かった様だ。とは言え、結愛ちゃんが言う様に見れば、豪華な美味しそうな弁当なのだ。種類も多く、色とりどりしている。


「ああ。ずる〜い。紬ちゃんまでキャラ弁だ!」


陽葵ちゃんは諦め切れず、紬ちゃんに八つ当たりか?


「ちょっと、それどう言う意味よー。私がキャラ弁じゃ悪いって訳‼︎」


紬ちゃんの当然の反論だ。


「何よ。紬ちゃんにはキャラ弁なんて似合わないわよー。ガッツリした物を持って来なきゃ足りないでしょう!」


陽葵ちゃんは悪気も無く言い放った。


「うむむむむむむむむむぅ」


紬ちゃんは悔しがる。


「まあまあ。陽葵ちゃん。もうこれまでよ。私のキャラ弁分けて上げるから、良い加減にしないとね」


結愛ちゃんはこれ以上の言い争いを許さなかった。


「良い。これ食べるから。折角、お母さんが作ってくれた物だから、残さず食べる」


陽葵ちゃんはきっぱりと断った。


「あれ、新葉君もキャラ弁なの?」


陽葵ちゃんが新葉の弁当がキャラ弁だと気付いて興味を持った様だ。


「えっと、僕の家では水葉姉ちゃんと妹の音葉がいるでしょう。キャラ弁作るついでに僕の弁当もキャラ弁になるんだよ」


新葉は家での出来事を語る。


「別に男子だからって、キャラ弁だって良いだろう。僕だって、キャラ弁だ。新幹線の!」


大地君が庇ったのか? 敢えてキャラ弁を主張した。


「けど、ハハ。大地君のキャラ弁は新幹線だから良いけど、新葉君のはパンダだもんな。可愛い」


樹君はにやけた顔で言った。僕の顔は見る見る内に真っ赤になった。やっぱり、僕は樹君が嫌いだー。

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