第13話渚ちゃんの心配と心春ちゃんの感謝。

 びっくりして言葉を失っている僕を気遣ってか、大地君が僕の代わりに挨拶をする。


「お早う御座います。樹君」


 大地君が満面の笑みで樹君に朝の挨拶をして居る。大地君は僕の為にクッションになってくれて居るのだろう。それはそれで何か怖い。大地君は樹君の事を怖くないのだろうか? 帰って挑発している様な気さえする。余り深く考えない様にしよう。なる様になるだけだ。それよりも大地君に頼っている場合では無い。樹君は僕に挨拶して来たんだ。僕が挨拶しなくてどうする。しっかりしろ僕。しっかりしろ新葉。


「樹君。お早う御座います」


 僕は思い切って挨拶をした。挨拶をしてしまえば、意外とホッとする物だ。


「じゃあ、また後で!」


 樹君が言った。僕は後でをゾクっとしたが、今は友達の普通の会話だと言う事にして置こう。僕達はそれで良かった物のクラスメートはざわ付いていた。あの野獣を手懐けた。とか、あの猛獣に謝らせた。とか、また後でってこえーよなとか口々に呟いていた。それを気にもしないのが心春ちゃんだった。心春ちゃんはさっきの樹君と僕と大地君のやり取りを見ていて、嬉しかった様だ。


「有難う。二人とも。樹君が人と仲良く話し掛けている様子を見たのは何年振りかなあー。大概言いたい事だけ一方的に言って、終わりだったけど、今は優しかった頃の樹君に戻ったみたいで嬉しいの。感謝しているわ」


 心春ちゃんは嬉しそうに僕達に話し掛けて来た。この屈託の無い笑顔は本物だ。この笑顔を悲しませてはいけない。だが、このまま普通に過ごせる気はしない。周りの反応もそうだし、警戒は怠れない。大地君も心配だ。第一目立っている事を無かった事には出来ない。そんな中、心配している子も心配している子が他にもいた。それは渚ちゃんだ。


「ごめんなさい。私が新葉君にお願いしたから目立っちゃったね!」


 などと渚ちゃんに言われるとこう言うしかないだろう。


「渚ちゃん大丈夫! 心配しないで!」


 と、僕は言うしか無いだろう。

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