第6話サックペン。樹君の逆鱗に触れた様だ。

 結菜ちゃんが今度は大地君に興味を示して話し掛ける。


「所で君は石毛大地君よね。モテそうな顔してるね。気を付けた方が良いよ」


 結菜は警告する。


「何。どう言う事」


 大地君は聞く。気を付けた方が良いと言う事は陽太君も言っていた事だった。何があると言うのだ。僕達は思った。


「やめて」


 心春が止めた。結菜は口を閉ざし黙り込んだ。まるで何も無かった様に普通の話に戻っていた。そんな事が続いたあの日の事だった。


「ちょっと、待って糸屑がこんな所に付いていたよ」


 大地君が心春の肩に着いていた糸屑を取ってそれを心春に見せた。


「やだ。有難う」


 心春ちゃんは大地君にニコッと笑ってお礼の言葉を伝えた。その後の事だった。大地君が席に座っていると、そこへ来たのだ。


「おい。お前何だよこれ。チャラチャラしたもん持って来やがって」


 言って、大地君の持っていたサックペンを投げ飛ばしてしまった。大地君は振り向き相手を睨む。大地君に取ってサックペンは大切な物だ。広平君から貰った思い出の品だ。サックには星がチャラチャラ着いている。それを投げ飛ばされてしまったのだから、溜まったものではない。


「何だよ。その目はオレとやろうってのか?」


 言って、樹君は大地君の胸倉を掴む。


「やめろ」


 言って、嫌がる。いつもの大地君なら相手にしない様だが、大切な物なので大地君もプツンと切れた。怒った。大地君が怒った。大地君が怒るの初めて見た。ある意味で怖。


「ガシッ」


 むかついた樹君は大地君を殴ろうとパンチを出す。新葉はまた、殴られそうな大地君の前に出た。両手を左右に大きく広げて、庇おうとする新葉に後ろから、今度は大地君が前に出て、新葉を庇う。樹君に殴られると思った瞬間の事だった。


「ドガッ」


「バターンドドドドドタッ」


 新葉達。二人の前にスカートを履いた膝蹴りが飛んで来た。僕と大地君は何を見たのか呆然としていた。紬ちゃんだった。思考が追い付いて行けない。紬ちゃんが樹君に膝蹴りを喰らわせたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る