第4話 感謝

 荒っぽい手つきで下着を剥ぎ取られ、彼の手が胸を揉みしだく。久しぶりに男性から触られて、体がすぐに反応してしまう。


「あっ……」

「……そうやってしおらしくしておけばいいんだ、マリエ」


 初めて名前で呼ばれた。そのことがなんだかくすぐったくて、一層体が敏感になる。若い男の子らしい、性急な手つきで乳首を転がされ、首筋を舐められる。ぞくぞくっと背中を快感が走った。そして彼の指先が茂みの中に分け入り、すでに濡れ始めた蜜壺の中に差し込まれた。


「あーっ……」


 かなり久しぶりにそこに侵入されて、思わず高い声を上げると、レオが光の速さで指を引き抜いた。私はちょっと驚いて、彼を見つめる。


「あれっ…ごめん、続けて大丈夫だよ。痛くないよ」


 思わず慰めるような言い方になってしまったが、彼はまったく私の言葉など聞いていないようで、指を見つめたまま固まっている。

―――なんだ?


「おーい、レオくーん。どうしたの?」


 彼の目の前で手を振って見せると、ようやくハッとした様子のレオが視線を合わせてきた。


「……どうなってんだ、おまえの体」

「はい?」

「なんでここが、こんなに狭いんだ?」


 一瞬、何のことかわからなかった。え?私ってそんな名器でしたっけ?と、思わず自問自答してから、いやいや、これまでの乏しい性経験を振り返ってみても、そんなこと言われたことないし、と自嘲する。


「えーっと、どういうこと?」

「……もう一度触らせてくれ」


 いわれるがまま、真剣な顔のレオに体を任せると、レオの骨ばった細い指が恐る恐る私の入り口に触れてきて、ゆっくりと膣の中に侵入してきた。やっぱりおかしい、とレオが焦ったようにつぶやく。


「こんなに膣の穴が狭い女、見たことないぞ」

「えー…そ、そんなに狭くはないと思うけど……」

「いや、普通は……ここは空洞みたいに開いているはずなんだ。こんなに狭くて濡れてて…ギュウギュウ指を締め付けてくる穴、初めてだ……」


 レオの顔は深刻そのもので、私はまたしても理解し始めていた。たぶん…たぶん、この世界は私がいた世界と、体のつくりがちょっと違うのだろう。

 しかし、見たところレオの性器は大きさも形も元いた世界の男性たちとそう変わらない。なんとも不思議な気分で、私はレオの性器をそっと撫でた。


「うわっ!だから触んなって」

「まぁ、私の体がちょっと違うってことはわかったけど。続き、どうすんの?」

「え?」

「今日はここでおしまい?」


 にやりと笑って挑発すると、レオの顔がさっと赤くなった。


「いや、やめない」

「入れたい?」

「……入れたいよ。たぶん…すごい気持ちよさそう……」


 聞こえないくらい小さな声でつぶやくと、レオは慎重に自分のものを私の入り口に押し当ててきた。くちゅっと音が響き、レオはギュッと唇をかみしめる。


「大丈夫?」

「くそっ…入れるぞ……」


 ゆっくりと、押し分けるように彼のものが入ってくる。まだ先端しか入っていないところで、レオが苦しそうに呻いて動きを止めた。


「あーっ……くそ、なんだこれ……」

「ん……もっと奥まで入れて」


 もどかしくて、思わず自分から腰を動かすと、レオは震える手で私を抱きしめて動きを封じてきた。


「だめだ、バカ…動くな……ちょっと待て…」


 レオの金色の髪が、私の頬にかかる。少年らしい細い首筋から、清潔な石鹸の香りがした。私は思わずキュンとしてしまって、それに連動するように膣内が収縮した。すると、その動きに反応してレオがビクンと腰を震わせる。


「ば、ばか……中を動かすな……!」


 切羽詰まったレオの声が、めちゃくちゃかわいく聞こえる。私は思わず、彼の耳たぶに舌を這わせてささやいた。


「レオ…もっと奥まで突いて」

「…くっ」


 レオが腰を引き、次の瞬間私のお腹の上に精液が散らばった。


「あ……くぅ……」


 苦しそうに、レオが私のお腹に自分のものを擦りつけ、射精している。耐えきれなかったようだ。私はちょっと申し訳ない気分で、彼の足を撫でる。

 たっぷりと精をばらまいてから、レオは恥ずかしそうに耳まで赤くなってつぶやいた。


「……すまん」

「謝る必要ないよ。気持ちよかった?」


 あの偉そうなクソガキが恥ずかしそうに委縮している姿がたまらなくいじらしくて、私は朗らかに笑って彼を元気づける。枕元に置いてあったガーゼのようなタオルで、自分のお腹を拭き、それから彼に軽くキスした。レオは、相当プライドを傷つけられたようだ。視線を合わそうとせず、肩を落としている。


「悪かった……俺だけ達してしまった…」

「1回目はね」

「1回目?」


 きょとんとした目で顔を上げたレオに笑いかけて、私は彼の精液まみれの性器に顔を近づけた。


「うわっ……!」


 驚くレオの腰を押さえつけて、私は舌で丁寧に精液を舐めとっていく。鈴口の中に残っていた残滓もすべて吸い込み、ちろちろと舌で刺激していると、すぐに彼のものは硬さを取り戻した。顔を上げると、レオが興奮を隠しきれない表情で、快感に耐えるように唇をかみしめている。


「まだ若いんだから、2回目、できるでしょ?」


 私の質問に、彼は行動で答えた。私を再びベッドの上に組み敷いて、レオは自分のものを入り口に当てて、心を落ち着けるようにふーっと息を吐いた。ミルク色の頬が薄いピンク色に上気して、汗に濡れた金髪が束になって額にはりついているのが、なんとも背徳的だ。彼は覚悟を決めたように眉根を寄せて、ゆっくりと私の入り口に侵入してくる。


「はぁ……あー……くそっ……」

「んっ……レオ、一気に入れちゃえ」


 恐る恐る腰を沈めてくるレオに焦れて、私は彼の腰に足を絡ませ、一気に引き入れる。


「レオ、入ったね……」

「あ、ああ…だめだ……狭くて、もう…すぐ出ちゃうよこんなの…」


 レオは目を閉じて唇をかみしめたまま、体を硬直させて動かない。彼の性器が限界まで張りつめて、私の中で時々ビクッとうごめいている。必死で射精感を堪えているようだ。


――なんだよこいつ、可愛すぎる…!


 私は新鮮な感動さえ覚えながら、レオの肩を抱き寄せ、そっと頭を撫でる。


「大丈夫だよ…慣れるまで、こうしてよ?」

「……ありがとう…すまんが、もうちょっと待ってくれ…」


 私の耳元に顔をうずめて、レオが小さくつぶやく。


「おまえのことも満足させたいんだ…」


 可愛すぎる。思わず膣内がキュッと動いてしまい、レオはあわてたように低く呻いた。


「ば、ばか、動かすと出ちゃう…!」

「レオ、私も入れてるだけで気持ちいいからね」


 彼の頭を撫でながらささやくと、レオはますます苦しそうに呻く。彼の性器が一層硬さを増した気がした。


「……動くぞ!」


 我慢できない、というふうにレオが腰を動かしだす。膣壁を驚くほど硬く熱いもので擦られて、待ちわびた快感に思わず背中がゾクッとした。


「あっ……気持ちいい……」

「……ダメだ……腰が溶けて……ああっ……」


 私の奥をレオが一生懸命突いているのがわかる。汗が流れ、目元には快感の涙さえ光っている。その姿を見るだけで、興奮していってしまいそうだ。


「レオ…」

「……マリエ……」


 どちらからともなくキスをした。熱い舌を絡ませあい、レオが最後の力を振り絞るように大きく腰を突き出す。


「はぁっ……ダメだ、マリエもう出る……我慢できない…」

「いいよ、出して……!」

「あ、あ、だめだ出る……!」


 焦った声でレオが小さく叫び、次の瞬間大きく体を震わせた。ビクッビクッと性器が震えて、私の中で射精しているのがわかる。きつそうに目をとじて快感に震えるレオを見ていると、自然と膣がキュッと締まって、彼は一層眉根を寄せた。


「は、はぁ……マリエ…」


 射精を終えたレオは、どさっと私の体の上に身を預け、快感に溶け切ったぼんやりとした目で、とろりと笑った。


「ははっ……すごいな…こんなことがあるなんて……」

「何笑ってんのよ」


 思わず吹き出して、笑い返してしまう。つい数時間前まで蛇蝎のごとく嫌いあっていた相手と、こんなに満たされたセックスができるなんて。

 レオは性器を私の中に入れたまま、そっと私を抱きしめて、キスをした。今までの人生で、こんなにドキドキして、感動したことはなかった。私はこの世界に飛ばされて初めて、神に感謝したい気持ちになった。


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