31 私、ほのか。ねえ、私のバディにならない?

「オモチちゃんはルチアちゃんのことを教えてくれたんだね」

「プッププ~」

「お宝回収して帰ろっか。臭いし」

「はいっ。お腹も空いてきました」


 お昼を過ぎてると思う。金銀財宝は、種類がいっぱいあるのでホノカ様のインベントリには入れ辛い。なので私がクラフターズハンマーで叩いて、収納箱に入れていく。


「財宝が素材というのも不思議な気分です」

「ワカルゥ……ん? ルチア?」


 ルチアちゃんが壁に向かってホノカ様を引っ張ろうとしている。壁になにかあるのかな?


「「えっ!?」」


 壁の中に入っていくルチアちゃん。出たり入ったりしている。

 ルチアちゃんによって暴かれた隠し通路が、私たちの目の前にあった!


「これは期待っ」

「私は初めて見ました!」


 隠し部屋とか通路は、いいものが手に入る確率が高いらしい。ホノカ様の言う通り、期待していいだろう。

 私たちはルチアちゃんの案内で、隠された場所へ侵入する。


「なにもない?」

「あ、いえ、ホノカ様。ルチアちゃんのほうを見てください」


 松明をかざす。

 するとなにかの鉱石が、キラキラと松明の明かりを反射した。


「鑑定できないなあ。初級めーっ」

「少し素材化して持って帰りましょうか」


 アリーシャさんに見てもらえば分かるし。お腹空いたし、臭いし、素材集めはまた今度にしましょうと提案する。


「それもそうだね」


 承諾していただいたので、私はばくれつハンマーで広範囲を素材化した。

 なにかの鉱石が収納箱に入ったとき、私の周りに光が集まる。


「っ!?」

「マ、マイ?」


 キーンという音と共に光が集約、私の中に入っていく。そして頭に響くファンファーレ。


『万能作業台の機能が全て解放された。マイ、ホノカ。そなたらの未来に幸あれ』

「「ミフルー様!」」


 見てくださってたんだなという、恐れ多くも嬉しい想い。そして少し残念な場所にガッカリする私たち。


「どうせなら教会で聞きたかったね」

「はいぃ。でも──」


 万能作業台が最高までグレードアップしたというのは、素晴らしいことだと思う。ホノカ様が言うには、ルチアちゃんとレアメタルが切っ掛けだったのかもね、とのこと。確かにあり得るな。

 鑑定できない金属だし、妖精だし。


「予定通り一旦帰還しましょうか」

「そうだね。人も来ないだろうし、採取は後日にしよう」


 帰宅した私たちは、ご飯よりもまずお風呂、という選択をした。

 だって臭いし。

 みんなが臭い。

 染み付いた臭いを除去する必要がある。


 なのでしっかり汗をかいて、しっかり洗う。今日だけはオモチちゃんもローラちゃんも、お風呂に浸かることを選んだみたい。

 ルチアちゃんは最初からお風呂に浸かりたがったので、先に拭いてあげる。だってあそこに住んでたんだし。

 臭いので。


 女子から臭ってはいけない臭気を除去した私たちは、やっと食事にありつくことができた。既に夕日が妖精郷を赤く染めている。なのでお弁当にして持って行ったハンバーガーは、そのまま残しておくことにした。


 ルチアちゃんのご飯はお肉なので、私たちもステーキにすることにした。だって今日はドラゴンのお肉を獲得したのだから。

 ステーキならすぐに作れる。あとは簡単に野菜を取れるポトフにした。


「ルチアちゃんはどっちがいいかな?」


 私はドラゴン肉のステーキと生肉を見せた。すると尻尾で激しく生肉を叩きはじめるルチアちゃん。その後、丸呑みして私の首に巻き付き、眠ってしまった。


「えぇ?」

「なんだったんでしょう?」

「ドラゴンになにか思うところでもあったのかなあ?」

「ですねえ。あの場所を陣取ってて邪魔だったとか?」

「なるほどなー。あり得るね」


 そしたらホノカ様がやっつけたから、出てきてトモダチモンスターになってくれたのかもしれないな。

 そして早々に食事を終えた私たち。次の行動は決まっている。


「万能作業台っ」

「はいっ!」


 当然、グレードアップした万能作業台のチェックだ。私たちはクラフトハウスに行き、タブレットを開く。新たに追加された作業台は魔法。魔法作業台では錬金作業台よりも高度なものがクラフトできるようになるみたい。

 それはクラフターズハンマーと同系統のもののようだ。


 クラフターズグローブ。収納箱から任意の場所へ、ものを取り出せる魔法の手袋。

 クラフターズカーペット。空を飛ぶ絨毯。


「来たねっ。これでマイは、パーフェクトマイになった!」

「んふふふっ、もぉ、なんですかそれは」


 ホノカ様はこうなるんじゃないかと、思っていたそうだ。だってゲームがこうだったから、って。

 私は知らなかったけど、ホノカ様が信じてたから私も信じて待っていた。


 収納箱から任意の場所へ、ものを取り出せる魔法の手袋。

 これで私もホノカ様を手伝える。

 だって建材を思った場所に出せるんだから、建築だってできる。


「やりました……さっそくクラフトしちゃいます」

「ん? できる? 素材がレアなのでは」

「実はルチアちゃんの案内してくれた場所で、取れてたみたいです」


 オリハルコン3個。ハンマーの進化に使う1個。それからグローブとカーペットのクラフトに使う分の2個。

 狙ったかのようにピッタリ手に入った。ミフルー様の仕業かもしれないな。

 あと、収納箱に鑑定機能が付いてた。なのでホノカ様が鑑定できなかった、ミスリルとオリハルコンを採取できたことが分かった。


「今日はもう夜だし、明日試そうね!」

「はいっ」


 でも私は興奮していたせいで、今日はなかなか寝付けなかった。

 ホノカ様に起こされた私は、慌てて朝の準備をしようとした。でももうホノカ様とローラちゃんが、やってくれてたみたい。


「ごめんなさい」

「いいよいいよ。だってなかなか寝られなかったんでしょ?」

「は、はい」


 その気持ちも分かると言われた。でも気を付けよう。私は与えてもらってばかりなんだから。

 顔を洗って、ご飯を食べる。

 そしてクラフターズシリーズを装備する。


「じゃあマイ。宿屋兼酒場の2階の壁、やってみてくれる?」

「分かりました!」


 建材は飾り壁。万能作業台の収納箱に入っている。地面から建築するのは見えづらいから、私はクラフターズカーペットに乗っての作業だ。私の思った通りに動く空飛ぶ絨毯のおかげで、問題なく作業できる。


「やりましたホノカ様っ!」

「やったね!」


 私はやっと、ホノカ様のお手伝いができるようになった。

 お腹いっぱい食べられて。

 健康でいられて。

 痛いことはなくなって。

 助けてくれたお方に、私はやっと恩返しができるようになった。




「私、ほのか。ねえ、私のバディにならない?」


 死を待つだけだった私の人生を変えてくれた──ホノカ様の言葉。


「よろしくお願いします。ホノカ様!」

「え~? な~に?」

「えへへ、なんでもないですっ」


 新しい人生の始まりだ。



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あとがき

 最後まで読んでいただきありがとうございました!


推しキャラ転生はしゃーわせです

https://kakuyomu.jp/works/16818023212548900178

コロロの森のフィアフィアスー ~子エルフちゃんは容赦なし~(完結済み)

https://kakuyomu.jp/works/16817330652626485380


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私に乗り移る予定だった異世界人様とつくる妖精郷 ~万能作業台はチートだそうです~ ヒコマキ @cell_makimaki

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