28 怠惰とは違う?

「ところでホノカ様。収納棚のことなんですが」

「うん?」


 デザインのことを聞いてみた。色とか種類とか、違いがあったほうが売りやすいんじゃないかって。


「ありだと思うよ、私も」

「よかったっ」


 果樹園も種を植え終わったし、お昼からはクラフトの時間にしよう。クラフトハウスに発酵ダルを追加したっていいし、染料ダルも増やしたっていい。

 窓や明かり系のアイテムだって必要になってくるから、クラフトするものは結構ある。


「目指せイネとダイズです。ニホンシュとショーユです。ゴールドランクも視野に入れましたっ」

「そんなに~?」

「そんなにです」


 カラアゲの衝撃は凄かったんだから仕方ない。ホノカ様にもドラゴン肉のカラアゲって伝えたら、口がムニュムニュ動いてたから想像しちゃったんだと思う。


「魔石の確保も大事になってきたね」

「罠の範囲を広げるのもありですかね?」

「……いや、それはしないほうがいいかなあ」


 なんでも手負いの魔物は厄介なことになりやすいそうで、罠を仕込むなら妖精郷の側のほうがいいみたい。

 すぐに始末できるから、だって。農業も魔物の討伐も、色々とルールがあるようだ。私はもっと学ばないと駄目だなあ。


「でーきぴっ」

「なんですか? その掛け声」

「で、できたってこと。聞かれると恥ずかしい」


 なるほど。可愛らしい掛け声か。じゃあ私も覚えておこう。そう思ったのが顔に出ていたのか、覚えなくていいよと言われた。


「可愛いですのに。ぴってところ」

「ほ、ほら、そんなことよりご飯にしよう。ご飯ご飯」

「はーい。じゃあテーブルに並べちゃいますね」


 でーきぴっの掛け声で完成したお昼ご飯を取り出して、お皿に乗せる。今日のお昼はハンバーガーとナポリタン。そしてデザートにはオモチちゃん、ローラちゃん、いつもありがとうって気持ちを込めた、コーヒーロールケーキとモンブランだ。こっちはあとで出す。


「「いただきます」」

「プププクゥ」「ホフホフフ」


 そういえばいつの間にかホノカ様のポーズを、みんなするようになってる。「いただきます」のときの、手を合わせるポーズ。

 そしてオモチちゃん以外の目が、全員オモチちゃんに向いている。ローラちゃんの目にも、オモチちゃんの可愛らしさが突き刺さっている様子が見て取れた。


 オモチは万人を虜にする小悪魔ちゃんだね。ってホノカ様が笑った。確かに手を合わせるポーズがこれほど似合う生き物は、オモチちゃん以外にはいないかもしれないな。


 食事を終えた私たち。

 デザートの時間だ。


「2人ともちょっと待っててね」


 私とホノカ様で、オモチちゃんとローラちゃんにデザートのケーキを差し出した。もちろん私たちも食べるから、私たちの分も出すけど。でもその前に感謝の言葉と一緒に2人の前にケーキを並べる。


「オモチ、ローラ、いつもありがとっ」

「どっちも美味しいからぜひ食べてね!」


 結果、オモチちゃんとローラちゃんは狂喜乱舞した。


「ぉぉぅ……」

「び、びっくりしました」

「でもこんなに喜んでくれるならよかったね」

「はいっ」


 私たちも食べよう。2つは多いので、ホノカ様と半分こして両方食べることにする。ホノカ様はモンブランのほうが好きらしい。私的にはコーヒーロールケーキだけど。

 違う種類のケーキもあるし、レシピ解放を目指して手持ちにない果実を収納箱に入れないとな。


「それならド定番のイチゴかなあ?」


 ベリー系は定番中の定番らしい。種は1つも持っていないけど。次にエゼルテーの街へ行ったときにでも買うことにしよう。

 とはいっても、コーヒーロールケーキを超える甘味なんて、この世には存在しないんじゃないかと私は思っているのだけど。


「あれこそが究極かと」

「マイは好きだねえ、コーヒーロールケーキ」


 コーヒー畑もあったほうがいいかなあ? 一応コーヒー豆はいっぱい買ってあるけど。でもどちらかといえば嗜好品。生活に必要かと言われたら、そういう訳じゃない。住人が少ないから、あまり手広くやるのは避けたほうがいいと思う。

 残念だけど。


 買ってきたコーヒー豆でも、こんなに美味しいんだ。オモチちゃんの祝福を受けたコーヒー豆だと、どれほどのものになるのか。それは妖精郷の発展と共に、ということになるだろうな。楽しみにしておこう。


「満腹だぁ」

「私も苦しいです」


 ナポリタン分が多かったねと笑い合う。私もホノカ様も満腹で動けないから、今日の午後はお休みにしようということになった。


「お休みですか? いいんですか? そんなことをして」

「ダイジョブ。これこそがスローライフだと思うのよ」


 そうなんだろうか?

 怠惰とは違う?

 スローライフが私にはよく分からない。でもホノカ様が、そうおっしゃるならスローライフなのかもしれないな。この世界にはない文化だし。


「ではコーヒーでも出しますか?」

「あ、お願い。のんびりしながら、この前買った本でも読むことにする」

「分かりました」


 私はどうしようかなーって思ってたら、オモチちゃんとローラちゃんが収納箱に向かう。


「あ、私も混ぜてっ」


 おもちゃブロックで建築。いっぱい練習……ううん、ホノカ様が言ってた。遊べばいいんだ。私は2人とおもちゃブロックで遊ぶことにした。1時間ほど遊んでたら、ホノカ様も混ざった。読書に飽きたみたい。コツを教えてもらいながら、私はトーフ建築をグレードアップさせていくことに成功した。


「そういえば今日は採取に行かなかったから、魔物チェックしてないや」


 行ってくるねーと出掛けるホノカ様に、オモチちゃんもくっ付いて行った。ローラちゃんは私の護衛に残ってと頼まれてたので、私の側にいてくれる。


「ローラちゃん、ありがとう」

「ホッフ」

「あ、そういえばローラちゃんのスカーフ作ってない」


 クラフトハウスへ一緒に行く。何色がいいかなあ。オモチちゃんには青のスカーフを作ったけど……うーん。


「思い切って赤とか?」


 いいかもしれない。淡いピンクでもいいかなって思ったけど、白と赤の染料を混ぜたら作れるのかな?

 あ、駄目だ。染料ダルには1種類しか入れられない。ピンク色の花びらとかが必要なのかもしれないな。赤の染料は──在庫ある。収納棚に使うかもしれないから、染料ダルを追加でクラフトして、仕込んでおこう。


 そういえば私たちは外で作業するんだから、麦わら帽子もあったほうがいいかもしれない。

 クラフトハウスに来たら、ちょこちょこやることが出てくるな。ヒルク草の丸薬も作って、と。


 収納棚も作ろう。今ある染料で染めて、何色が合うのかホノカ様と相談かな。

 赤、青、白、黒、黄、緑。6種類だ。売れそうにないものはお家で使えばいいと思うし、全部試してみよう。


「よし、ローラちゃんのスカーフをクラフトします」


 私の手元を興味深そうに見ていたローラちゃんに、すぐできるから待っててと伝えてクラフト。建材ブロックのように1000個、みたいな量じゃなければ本当にすぐ完成する。さっそく赤に染色して、ローラちゃんに着けてもらった。


「可愛いっ」


 ローラちゃんも喜んでくれて、手を叩いてる。よかった。


「じゃあローラちゃん、収納棚を染色していくから、お家のほうに運んでくれる?」

「ッホー」


 染色した収納棚を床に並べる。ローラちゃんは2個ずつ。私は身体強化をして1つだけ。もっと運べる能力があったらよかったんだけどな。

 私に足りないところだ。

 作れても建てることができないからなあ。ホノカ様を早く手伝えるようになりたい。ホノカ様には私ができるようになると確信があるみたいだから、信じて私の成長を待とう。


「ホノカ様とオモチちゃん、遅いね」


 日が落ちてきた。

 青空が赤く染まり、徐々に暗くなっていく。ホノカ様ならどんなことでも突破できるだろうし、心配する必要はないんだけど……。


「私たちはお風呂と夕飯の準備してようか、ローラちゃん」


 ローラちゃんは頷いて、焼き石をお風呂に入れてくれるそうだ。じゃあ私はメニューを決めよう。なにがいいかな?

 結局しっかりと働いてきそうなホノカ様だ。お肉かな? でも昨日ステーキだったし……んー。

 今夜はピザとポトフにしよう。

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レシピ 特に記載がなければ数量は1

ハンバーガー

 パン+キャベツ+肉+塩

ナポリタン

 小麦+塩+玉葱+ピーマン+ソーセージ+トマト

ピザ

 小麦+塩+玉葱+ピーマン+ソーセージ+トマト+チーズ

ポトフ

 塩+胡椒+野菜+水+バター+ウィンナー(+ワイン)

モンブラン5

 小麦+砂糖+栗+バター+生クリーム

コーヒーロールケーキ

 小麦+砂糖+コーヒー豆+生クリーム+バター

スカーフ

 ツタ

麦わら帽子

 樹皮+ツタ

収納棚

 木材+魔石

染料

 岩石などから取れるものは5つ

 葉10、果実5からの場合は1つ


次話はすぐに投稿します。

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