25 私は気づいてはいけない真実に近づいた気がして、考えるのをやめた

「これは驚きだね、ローラ」

「ホッフ……」


 ローラちゃんもびっくりしてる。もちろん私だってビックリしてる。まさかローラちゃんまで木を素材化させるなんて。しかもばくれつハンマーより範囲が広く、縦横高さが6ブロック分だった。さすがに収納箱へ入っていくわけじゃあなかったけど、効率が凄く上がった。


「ローラちゃんも驚いてますし、トモダチモンスターだからなんでしょうか」

「そうかもねえ。トモダチモンスター図鑑にはなにか書かれてない?」

「調べてみます」


 タブレットを開いて図鑑の項目に触れる。トモダチモンスター図鑑をつついて、ローラちゃんのところを見てみた。


 ゴルドゴリラ。ゴリラファミリーの亜種。霊的な山や森で、稀に生まれる。しかしリーダー気質でない場合は、産まれのファミリーであっても、攻撃され命を落とすことが多い。レア度★★★。

 個体名ローラの性格は基本穏やかで、いいひと。甘味を好むため虫歯キング。


「特に違いはありませんでした」

「つまり……見たら分かる、はかどるね、ってことが分かっただけかあ」

「はい。でも素早く素材を集められますから、いいことですよ」

「だねっ」


 樹上で回りを警戒していたオモチちゃんが「キュッキュッ」と、警戒を即すような鳴き声を上げる。魔物の接近かな?


「ゴブリンです!」

「地球産ゴブとの違いが分からないな」


 あ、終わった。

 集めるとこまで終わった。

 地球産ゴブとの、までの間に退治して、違いが分からないなって言ってる間に、私が素材化しやすいように集めてくれてた。

 私もテキパキ素材化してしまおう。


「魔石くらいしか価値がなさそうですね」

「牙も買取してくれるはずだけど、なにに使うんだか謎だよ」

「魔石32個、牙118個でした」

「魔石は売らずに、マイのクラフト用にしちゃおう」

「はい」


 この辺りは魔物も弱いみたい。山に入ると強くなるのだろうか?

 何度か襲われたけど、サクサク終わらせるホノカ様。ドラゴンもあっさり終わらせるくらいだし、私でも問題ない程度の魔物じゃあどうにもならないだろう。

 ゴブリンとオオカミから素材を得た。


「そういえばトモダチモンスターにはならなかったね」

「なんででしょうね?」


 ネクタル以外にも、なにか条件が他にもあるのかな? オモチちゃんは自分から来たし、ローラちゃんのときはイジメられてるのを助けたからかな。

 でもトモダチモンスターになるなら、2人みたいに可愛いほうが嬉しいな。


 お昼前まで採取をして、拠点に戻る私たち。帰りしなに昼食後の予定を立てておく。といっても朝考えたことを、ホノカ様に提案しただけだけど。

 私が果樹園とクラフト。発酵ダルと収納棚の作成だ。

 ホノカ様がシスター様の住居建設。

 オモチちゃんとローラちゃんが、畑を担当する。


 ホノカ様からも了承を得たので、ご飯を仕込んだらローラちゃん用の農具をクラフトしておこう。メニューはナポリタンとポトフなので、ポトフの分だけ食材をかまどに入れる。


「クラフト用の小屋も作ったほうがいいかな。家のウッドデッキじゃ狭くなってるでしょ?」

「そう、ですね。お願いしていいですか?」

「もちろーん。ご飯食べたらさっそく作っちゃうよ」

「ありがとうございます、ホノカ様」

「拠点を成長させるにはマイの力が重要だからね!」


 私のことが必要だって言ってくれるホノカ様。私は凄く嬉しくて、一気にやる気が満ちてきた。


「頑張ります!」

「目指せスローライフっ」

「おーっ」

「クゥ~ッ」

「……ホッホー」



 私たちの振り上げる拳を見た、オモチちゃんも参加。ローラちゃんもおずおずとだけど参加してくれた。優しい子たちだな。妖精郷の名前に恥じないような楽園にしなくちゃ。


「ン~ッ、おいしっ。こっちの世界は食材が美味しい気がする」

「そうなんですか? だったらホノカ様の世界の調理法と合わせれば最強ですねっ」

「しかし私の作れる料理は、レパートリーが少ないんだよね」


 と残念そうなホノカ様。落ち着いたら色々巡って食べ歩きもいいんじゃないかと、提案しておいた。


「うん。でもまずは拠点であるこの妖精郷の成長が急務」

「洗い物を済ませたら、さっそく取り掛かります」


 ムン、と気合を入れる私に、オモチちゃんがクゥクゥ鳴いて食器と自分を指さしてる。


「オモチちゃんが洗ってくれるってこと?」

「プゥ~」

「わぁ、オモチは農業以外もお手伝いできるんだね!」

「ププゥー」

「じゃあお願いするね、オモチちゃん」


 私はローラちゃんに農具を渡して、発酵ダルと収納棚のクラフトに取り掛かった。万能作業台でのクラフトは、タルやかまどと違って、そんなに時間が掛からない。完成した発酵ダルと収納棚を仕舞って、果樹園づくりに向かう。


 ネクタル用の仙桃と油用のオリーブを筆頭に、モンブランに必要な栗や色んな果樹を育てる予定だ。精霊様とオモチちゃんの加護見込みなところもあるけど、仕方がないと思う。私もホノカ様も、知識が足りないのだから。

 でもまずは「やってみる」だ。


 階段状に整地した果樹園予定地に、肥料を混ぜ込んだ土ブロックを置いていく必要がある。でも私では土ブロックの移動ができないから、あとでホノカ様にやってもらう必要があった。


 収納箱から好きなところにブロックを出せたらいいんだけどな。以前そんなことをホノカ様に言ったら、その内できるようになるかもって言われたことがある。

 ゲームでは当然の機能だったそうだ。

 だからミフルー様も絶対にそういう能力を仕込んでるはずと。


 そのためには私のレベルアップが必要ってことだ。昨日上がったばっかりだから、しばらくは無理だろうなあ。

 そんなことを考えながら、最初の予定より広い果樹園の整地を進めた。


 大まかに削るときは、ぼっかんやばくれつで一気に整地。細かな調整は1ブロックずつ叩いて、岩を素材化させる。初めの頃は予定外の場所まで削っちゃってしまってたけど、最近はハンマーの扱いにも慣れてきてる。ぼっかんやばくれつでも狙い通りに整地ができるようになった。


「よし、整地は終わった。土ブロックを用意しておこう」


 そのあとはローラちゃんと一緒に畑づくりしよう。ホノカ様に声を掛けて、畑予定地に向かう。

 あ、オモチちゃんもいる。オモチちゃんが畑の側で、祝福を与えたみたい。前に見たときと同じように、光が降り注いだ。


「オモチちゃーん、ローラちゃーん、私も手伝うよー」


 まずは雑草を叩いて素材化する。クラフターズハンマーのおかげで、素早く雑草を除去できるのが便利だ。雑草も素材として使えて、5つで糸が1つできる。糸も5つで紐1つになるから、雑草だって無駄にはできない。


 さすがミフルー様の作った万能作業台。

 ホノカ様がチートと呼ぶだけはある。

 ゴミだって、なにかに変わって役に立つものが作れるんだから。


「うわぁ、ローラちゃんのお仕事、早いねっ」


 私も頑張ろう。少し硬い土を、クワで耕していく。耕したところは土を台形に盛って、うねにする。

 この作業はさすがにクラフターズハンマーではできない。叩いちゃうとブロック状の素材になってしまうから、クワで地道に進めていく。


「フゥー」


 私が1面仕上げる間に、ローラちゃんは3面の畑を作り終わってた。火力こそパワーの差を実感する。これでも身体強化を掛けてるんだけどなあ。


「そういえばうねを作ること、言ってなかったのに……知ってたの? ローラちゃん」


 オモチちゃんが伝えたのかな? って思ったら、ローラちゃんがジャガイモ畑を指さした。


「凄いなあ。頭もよくて力持ちで優しくて」


 私は畑づくりしてくれたローラちゃんにお礼を伝える。

 もちろん、できた畑から祝福してくれてるオモチちゃんにも、ありがとうを言う。


「2人のおかげで、もう畑が完成しちゃった」


 柵も付けちゃおう。作業台で作って、ローラちゃんに運んでもらう。台車があれば私でも運べるのにな。

 エゼルテーの街で買っておけばよかった。必要になるまで思い出せないなんて、私は駄目は駄目だ。万能作業台のレシピブックにも、台車の記載がないのが不思議なことでもある。ミフルー様は神様だから台車なんて使わないのかな?


 だからクラフトできないのか。

 私は気づいてはいけない真実に近づいた気がして、考えるのをやめた。



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あとがき


推しキャラ転生はしゃーわせです

https://kakuyomu.jp/works/16818023212548900178

コロロの森のフィアフィアスー ~子エルフちゃんは容赦なし~(完結済み)

https://kakuyomu.jp/works/16817330652626485380


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