第19話
駅員の服を着たロボットがお辞儀をしている。
「あ...あ、え~と」
状況を飲み込めず言葉が出てこない。
「博士カラ話ハキイテイマス。町ヲご案内シマス。」
「は、わか...りました」
このロボットには先頭の意思はないのか。
とりあえずついていくけど、逃げ道は確保しとかないと...
年季の入ったリュックサックからコンパスを取り出す。
えーっと、西の方向に歩けばここに戻れるかな...?
「ココハエスカレーターステーション。街ノ中心二位置シテイマス。」
「へ~、どれぐらい街は広いの?」
「東京都ガ丸々地下ニアルと考エテイタダイタラ分カリヤスイカト」
「めちゃくちゃ広いじゃん」
「博士ハ偉大デス。」
この巨大都市は博士が作ったのか...
それもそうか。
喋りながら巨大なエスカレーターを降りていると、下に見える道路にスーツを着たロボットが見える。
「あれは何?なんでスーツ着てるの?」
「ココニ存在スルロボットノ全テハ仕事ヲシテオリマス。」
「えぇ?仕事する必要なくない?だって人間いないんでしょ?」
「ソレハ我々ニモ分カラナイデス。博士ノ命令ヲ聞クダケデスノデ。」
なんで博士はこんな街を作ったんだろう........
「あ...」
というか、聞きたいことだらけで聞きそびれたけどロボットとの戦争を起こしたのって博士しかいなくない...?
あの人が、世界を...私の家族を...殺したのか...。
あの人が...いや、あいつが...
ガタン...ガタン...
エスカレーターの終わりが見えてきた。
「足元オ気ヲツケクダサイ。」
久しぶりに乗ったエスカレーター。
少し降りるのに緊張する。
ガタン...ガタン...
「ほいっ、わっとと危な!」
普通におりればよかったのに、変に緊張してこけそうになった。
いくらロボット相手でも恥ずかしい。
少し下を向いて恥ずかし交じりの笑いをする。
「タクシーヲ止メテイマス。オ乗リクダサイ。」
タイヤが無くて、少し地面から浮いた車が道路に止まっている。
反重力装置が使われている。
富士山の近くで落ちてきた飛行機にも使われていたやつだ...
バタンっ!
「ふぅ~、どこに向かうの?この車。」
「コノ車ハココカラ約26km先ニアル、ローンチヴィーグルタワーニムカイマス。」
「なんじゃそりゃ、博士がいるの?」
「ソウデス。博士ハココデ研究ヲシテオリマス。」
「ほぇ~、何の研究?」
「..........発車シマス。オ気ヲツケクダサイ。」
聞こえなかったのかな?
「なんの研きゅわわわ」
車が浮き始めた。
高く高くに上っていく。
道路から見える飛行機雲のようだった車の列にスッと入る。
初めての飛行機(車)だった。
空に浮くってこんなに怖いのか...
窓際に指を乗せ、鼻から上だけを出して外を眺める。
そういえばここって、なんで空があるんだろう?
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