第18話

「私はあの日、肉体を捨てたんだよ。分かるかい?」


「肉体を捨てた??」


「脳が無かったと報告されたと書いてあったろう?あれはね、私が脳を肉体から移植したんだよ。」


この人は何を言っているんだ?

当たり前のように話しているが明らかに常軌を逸している。


「いや...あなた大丈夫?」


「いたって健康だ。」


「そういう事じゃなくて...おかしいよ」


「う~ん、君も十分おかしい生い立ちをしているぞ。聞いてないのか?君の祖父から。」


「え...?何も知らないよ...?」


「なるほど...................地下に来なさい。君の祖父が残したものもある。」


「私の事、殺したりしないよね?」


「君のことは何があっても殺さないよ。君には価値がある。」


信用していいのだろうか。

おじいちゃんの残したもの...気になる。

それにCAREの居場所も聞かなきゃ。

この人がロボット達を動かしているなら、場所も知っているはずだ。


「あの、CAREってどこにいるの?」


「CARE?」


「うん。けーちゃんって呼んでたんだけど...」


「君の祖父が使っていたロボットの事か?」


「うん」


「それなら地下にいる。あのロボットは凄いぞ。私の作ったはずのプログラムが書き換えられていた。」


おじいちゃんがいじったんだ。

だから、CAREだけは私の味方だったんだ。


「ありがとう...」

視界がぼやける。

手を強く握って前を向く。


「こっちだ。この廊下をまっすぐ歩いていくと右側にエレベーターが見える。そこに乗りなさい。乗ったら勝手に地下に向かってくれる。」


「わかった。」

青白い影が私の前から消え、真っ白な空間に一人になった。

はぁ、また歩くのか...


肩をすぼめて速足で歩く。

すると壁、天井、床、目に映るすべての景色が変わり始めた。


気付けば辺り一面に桜が咲き誇っていた。

落ちる桜の花びらがまるで私を包むように空を舞う。


「綺麗...」

崩れたビル、焦げた家、沈んだ街そんな世界は全部嘘だったんじゃないかと、そう思えた。


桜の花びらを夢中になって追いかけていると私の右側に真っ白い四角が現れた。

夢の景色はここまでのようだ。

近寄るとエレベーターが開く。


一度大きく深呼吸をし、エレベーターに乗り込む。

中に入り振り返ると、大きなドアが閉じていく。


ガシャン...!!

と大きな音を立てエレベーターが閉じると勢い良く下がり始めた。


エレベーターは全面ガラス張りになっており数分降りると巨大な地下都市が視界を埋め尽くした。


「は?」

目をこする。頬をつねる。

夢?じゃないよね。


道路があり、ビルが立ち並び、車は空を翔ける。それに、地下なのに空がある。


「なにこれ.....」

想像をはるかに超える景色に固まっているとエレベーターは

しかし、私はエレベーターから降りられずにいた。


「いや、せめて研究施設があるとかそのレベルだと思っていたのに街?いや、街は流石にちょっと.......」

エレベーターの中で頭を抱え考えていた私にロボットが話しかけてきた。


「ヨウコソ、オコシクダサイマシタレイ様。」

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