第16話

辺りを見回す。

木々の隙間から朝の光が地を照らす。


どこだ?どこから聞こえているんだ?


「だれですか??どこにいるんですか??!」

声を張り上げる。

飛行機の中から聞こえた声と同じ人物だ。


「そこにいるのは分かっ...いる。東京駅の...地下...来なさい」


ノイズ交じりではっきりとは聞こえないがおそらく、東京駅の地下に来いと言っている。


正直、怪しすぎる。

念願の生き残りを見つけるチャンスかもしれないけど、怪しすぎる。

このまま指示に従って、行ってみたら私を殺すための人工知能が誘っていたとかなったら本当に笑えない。


それに、何万体もいるロボットを通り抜けるのなんか絶対に無理だ。

途中で殺されてしまう。


「ロボットの...機能は...停止して...いる」


「?」

ロボットの機能は停止していると言ったのか?

本当なのかな?


草むらに落ちていた小石を拾い上げ、ロボットに投げる。

真っ白なロボットに当たって、ドアを中指の第二関節でノックするような音がした。


その後十秒ほどロボットを見つめる。

本当に動かなかった。

念のために違うロボットにも石を投げてみる。

もう一台のロボットも動かなかった。


恐る恐る草むらから出る。


「自転車は...置いたままでいいか...」

六角形の真っ白なタイルがずっと先までひかれていて、何万体もロボットが置かれている異様な光景。

置かれているロボットの全員が東京駅を見つめている。


私は、東京駅に向かわずCAREを探し始めた。

端から端までぐるりと回るように探した。

何時間も探し続けた。


空が暗くなってきた頃、タイルの隙間が赤く光りだした。

一心不乱に探し続けていたが、我に返った。


何万体もいる中から、CAREを探し出すのは何日も、何週間もかかる。

もし、探している最中にロボットが動き出したら...


速足で草むらに戻る。


「どうしよう...やっぱり行くしかないのかな...」


探し続ければ続けるほど危険度が増していく。

東京駅に行けば、CAREを返してくれるのかな...


今日は歩き回って足が棒のようになってしまったから、休もう。

木にもたれかかり目を閉じる。


瞼の裏側が少し赤く光って見える中、すぐに眠りについた。


その夜私は夢を見た。

その夢ではおじいちゃんがこんなことを言っていた。


「遂に完成だ!!この子は人類の未来だ!名前はそうだな...君の名前はレイだ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る