第13話

久しぶりに声を張り上げた。

機械越しではあったが、明らかに人が喋っていることが分かった。


「返事できますか?!どこにいるんですか??!」

声をかけ続けるが返事は帰ってこない。

光っていた赤いランプも完全に消えてしまった。


あのランプ...私の家を焼き尽くしたロボットの目に似ていた。

それに...少し前にあった柴犬の首輪にもついておりどれも赤色に光っていた。

なんなんだろう...


「なんで返事してくれないの...」

返事が返ってこないことに心底うんざりし、下を向きながら飛行機を出る。


「はぁ~まだ生きてるのかな...」

うんざりはしたがまだ人が生きているという可能性がぐっと上がった。

機械の故障で用意されていたセリフが勝手に流れだした可能性も考えておこう。


正直、期待することが怖くなってしまっている。

戦争が起きた後何度も何度も人がいるんじゃないのかと探し回ったが、どこにもいなかった。


絶望だった。

何度も命を絶とうとした。

生きてる意味を何度も失った。


だから、期待するということが怖くなってしまった。


自分に何度も期待するなと言い聞かせ、両手で頬を叩く。

こんなところで道草を食べている暇ではない。

膝に巻いていたおじいちゃんのハンカチを取り、たたんでカバンにしまう。

傷はかさぶたになっており、もう自転車の進行に支障は出ない。


「急がなきゃ」

ひとりでに出たその言葉で私の足は動き出した。


すぐに自転車に跨り、進み始める。


「はぁ...はぁ...」

ゆっくりと漕いでいたいつもとは違い、息切れするほど急いで進む。


時間はかなりかかかっているが東京にかなり近づいている。

何日かかったのだろうか。


CAREは来ているのだろうか。

今になって心配になってきた。


心配しながら道を進んでいると、かなり遠くだが人影が見える。


「人なのか...な...?」

ひたすらまっすぐに歩き続ける人影に不信感を抱きながら近づいていく。

鮮明に見えるほど近づくとそれがロボットなのに気が付いた。


急いでブレーキをかける。

後ろにいるからか、私のことなんて気にも留めず歩き続ける。


進んでいる方向は私と同じ、東だった。


私の頭に流れ込んできた東京の位置を表す情報。

あの出来事が起きた後から会うロボットは全員東に向かっていた。


それに、空をひたすら周回するように飛んでいた飛行機も東に向かいながら地面に落下した。


その飛行機からは誰かの声と思われるもの...

正直、誰かが指示したとしか考えられない。


飛行機から聞こえた声の主が、その指示を出した人なのか?


もしその声の主がすべてのロボットを操れるとしたら..

戦争がロボットの暴走ではなく、意図的に起こされたものだとしたら...


最悪のシナリオが頭に浮かんだ。






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