第12話
飛行機の前で数時間。
日が完全に落ち辺りは月明かりと大炎の残り火に包まれていた。
「今日は外で寝ても暖かいな〜」
いつもは日が落ちる前に泊まれそうな洞穴や廃墟にランタンを置いて泊まっていた。
でも、今日はだだっ広い道の真ん中に寝転がっている。
ランタンなんて必要ない。
真っ赤な炎を包むように月明かりがさす。
まるで水底にいるようだった。
戦争の影響で街の明かりが消えてから、星がよく見えるようになった。
真っ黒な空のキャンパスに誰かが描いた星が輝く。
星の群れをかき分けて一人進んでいく赤い星が見える。
初めて気が付いた。
人の生きた証がこんな身近に残っていたのか。
おそらく、宇宙ステーションか何かだと思う。
戦前、ニュースで何度も見た。
「だれか乗ってないかなぁ...」
届くはずがないことは分かった上で、腕を伸ばし大きく手を振った。
今日はあんまり進めなかったし、明日は急ぎ目で動こう...
「ふぁ~」
もう眠たい。
今日はここで眠りについてしまおう。
パチパチ...ピピピ...パチパチ...............パチ...ピピピ...ピピピ...
一晩中飛行機のうめき声が鳴り響いていた。
夜明けが近づくにつれて炎が落ち着き、機械の音だけが聞こえるようになっていた。
「まっぶし...」
瞼の向こうから差し込んでくる朝焼けで目が覚めた。
顔の上に手をかざし、ゆっくりと目を開ける。
真っ白い世界にぼやけた大きな手が一つ。
二十秒ほどその態勢を続けた後、体を起こす。
「ふ~」
一日が始まる。
炎の消えた飛行機が見える。
外側は真っ黒に焦げてしまっていた。
重たい腰を持ち上げ、焦げ付いた飛行機に向かう。
熱の力で割れてしまった窓を頭をかがめながら通り抜け、焦げ付いた匂いに耐えながら飛行機内を漁る。
「う~ん、目新しいものは...ないかな?」
転がっている謎の金属を足でどかしたりしながら飛行機内を漁る。
燃えてしまったのか何も見つからず10分ほどして飛行機を出ようとしたとき、操縦室から音がした。
ピピ...ピピピ...
「えぇ?怖いんだけど...」
飛行機の内部は全部焼け焦げて、機械も壊れていたはずだ。
その証拠に朝起きてから今まで、機械音は鳴っていなかった。
「いやだなぁもう...」
ゆっくりとゆっくりと静かに音を立てないように操縦室に近づいていく。
真っ黒な扉を蹴り倒し、操縦室に入る。
「誰かいますか...?」
ピピピ...
「ヤハリ...マチガエナイナ...」
誰かの声が聞こえる。
よく見ると操縦席に設置された通信機から声が聞こえる。
「生きてますか!!?今どこにいるんですか??!」
さっきまで光っていた赤いランプが段々と萎んでいく。
「ちょっと待ってください!生きているんですか?!」
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