第10話

自転車に乗って進み続ける。

愛知城を見てから数日進み続けた。


すると私の左側に富士山が見えた。

戦争の影響でふもとの森は燃え、富士山事態にも大きな穴がちらほらと見える。

しかし、そんなものをものともせず雄大に力強くそびえる姿に力を感じた。


何千年も前からずっと日本を、世界を見てきた富士山にとってはこんな人間の小競り合いたいしたことないのだろうか。


「ほえ~すごいな富士さ痛っ!」

よそ見運転をした罰に当たってしまった。

道路に横たわっていた、錆びついて動かなくなった車の端に足をぶつけてしまった。


「痛いな~もう」

100%自分のせいなのはわかったうえで腹が立つ。


「血出てるパターンだなこれ...」

一旦自転車から降りて足がどうなっているか確かめる。

ズボンの膝の部分が破れて血が出ている。


「あ~最悪だ...」

地面に座り込み右足のズボンを膝が出るまで捲る。


「リュックに何かあったっけ」

リュックの中をごそごそと漁る。

上にあるものから順に外に出していく。

缶詰、歯磨き、水、コンパス、高級ズワイガニの缶詰、おじいちゃんにもらったハンカチ。


「使えそうなものは...う~ん」

後ろ頭をかきながら考える。


「水で洗って...ハンカチを傷口のところに巻こう」

まずペットボトルをの蓋を開け傷口に水をかける。

傷口にハンカチを巻く。


おじいちゃんからもらったハンカチは吸い込まれそうなほど真っ白で、とても綺麗だった。

今まで使うことは無く、お守りのように持っていた。


「おじいちゃんありがとう...」

また会いたいな...


私の家族は私にずっと冷たくて、優しいのはおじいちゃんだけだった。

それでも私は好きだったけど...

おじいちゃんに何度か両親のことを聞いたことあるけど、答えてくれなかった。

何かあったのかな?

私に話せないようなことが...

今思えばちゃんと聞いておけばよかったと思う。


色々と考えながら、立ち上げる。

ズボンは捲ったままで自転車にまたがる。

地面を蹴って進み始める。


「いたっ!」

ペダルを左足で踏み込む時に右足が上がると膝が痛む。

すぐに自転車を止め、また地面に座り込む。


「どうしよう...」



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