第8話
ギコ...ギコ...
あれから何日経ったろうか。
ありえないほど遅い自転車を手に入れてから、少しだけ移動速度が上がり愛知県に入ったのだろうか?
お城には詳しくないけど、教科書で見た愛知城らしきものを見た。
ところどころ朽ちてたけど多分あっているはず...?
もっと勉強したかったな...
私が小学生の時に戦争が始まってしまったから勉強があまりできなかった。
宿題とか面倒だったけど、もう二度とできないと考えると幸せだったんだなと思う。
いつだってそうだよな...
いつも私は無くなってから気付く。
まぁ人間ってそんなものか。
気付けるだけましだ、そう思っておこう。
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日が傾いてきた。
オレンジ色の夕焼けが空に広がる。
今日はボロボロに錆びついたコンビニの跡地に泊まろうと思う。
自転車をコンビニの前に止め、かごからリュックを取り出す。
壊れてしまったドアを力づくでこじ開け中に入る。
倒れた棚の周りをランタン片手に見て回る。
「何か使えそうなものはあるかな?」
十分ほど探し回って見つけたものは、スナック菓子、缶詰二個、二リットルの水が三本。
ほかにもいろいろと落ちているものはあったが消費期限が切れているものや見た目が明らかにまずいものしかなかった。
使えそうなものをリュックの中に無理やり突っ込み、レジの裏にある従業員の部屋のような場所に入る。
太陽はもう沈んでしまい、扉から入ってくるわずかな月明かりと持っていた小さなランタンで部屋を照らす。
ランタンの灯る部屋に一人で座り込む。
この時間が何より辛い。
幽霊でもいいから出てきてくれないかなと思う。
「おやすみなさい...」
来るはずのない返事を少し期待しながら挨拶をして眠りにつく。
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ギギ...ガゴン...
...........!!
ロボットだ。
音でわかる。
音でばれないようゆっくりと立ち上がり部屋から出る。
けーちゃんかもしれない。
静かにレジから顔を出し正体を確かめる。
夜明け前の少し明るい空が足音の正体を映す。
足音の主はCAREではなく、飲食店などで使われていた民間ロボットだった。
ロボットは私と同じ進行方向に向かって歩いていた。
「けーちゃんじゃないのか...」
心底うんざりした私は持っていた水と歯ブラシをリュックから出し歯磨きと洗顔をした。
一旦頭を冷やし気持ちを切り替えよう。
明けていく夜を見ながらコーンの缶詰を開ける。
スプーンを持っていないから飲み物を飲むように缶詰に口をつけて流し込む。
すごく美味しいというわけではないがほどほどに美味しい。
それが、ちょうどいい。
本当に美味しいものは自分へのご褒美に特別な日に食べることにしている。
だから、高級ズワイガニの缶詰はリュックの奥底に眠っている。
夜がほぼほぼ明けた頃、缶詰を食べ終わった。
重たい腰を上げ、伸びをした後使い込まれたリュックを背負う。
缶詰や水が増えたことで重たくなったリュックにバランスを崩されそうになりながらコンビニの外に出る。
錆びついた自転車にまたがって、東京に向かう。
空は快晴、朝の冷たい風を切りながら朽ちたコンビニをあとにする。
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