第7話
「あ~疲れた...」
あれから一日たって、朽ちた兵庫の標識を通り過ぎた。
最初はやる気いっぱいだったけど、野宿二日目ということもあって
体も、精神も疲労が取り切れていない。
歩いている最中にイイ感じの洞窟があったから一休みしていたらとんでもない量の
げじげじに襲われたし、出だしは最悪だった。
これからの道のりは楽しくなるんだろうか...
「大変だなこりゃ...」
CAREがいなくなってから独り言が多くなった気がする。
CAREの充電中一人で散歩に行くことがあったりしたけど、その時は一言もしゃべることはなかった。
ガサガサ...
「うわっ?!」
道の横の草むらから柴犬が出てきた。
ちょっと痩せ気味なその犬はふらふらと私のもとに寄ってきた。
「どうした~?」
撫でてあげると、しっぽを振って喜んでいた。
でも、お腹がすいているのか元気いっぱいといった感じではない。
ツナ缶があったような...
ごそごそとリュックの中を漁る。
「あった!!よ~しほらツナ缶だよ~」
ツナ缶を開けて地面に置くとすごい勢いで食べ始めた。
お腹減ってたんだなぁ。
頑張って野生の世界で生きてたんだろうな。
「じゃあまたね。」
今の私には犬と生活できるほどの余裕がない。
残念だけどすぐにお別れだな。
ツナ缶に夢中の犬を振り向いてチラチラと見ながら小走りで離れていく。
久々に命を見た。
私以外にも生きているものはまだ居たのかとちょっと安心した。
そのまま道なりに歩いていると錆びついた自転車が道路わきに放置されているのを見つけた。
「んん~直せば使えるかな...」
いや、錆取りは無理だな。
手持ちのものは食料品ばかりで自転車を治せるようなものはない。
「う~ん...乗れるかなぁ...?」
自転車にまたがってペダルを蹴る。
いびつな音を立てながら進む。
正直自転車としては壊滅的な遅さではあるが歩きよりは早い。
ボロボロではあるがかごもついている。
リュックをかごに乗せて進みだす。
ギコギコと周りに響かせながら東に向かう。
速度は昨日より少し早めで。
ちょっとした進歩が長い旅路に大きな影響を与える。
道の両端に生える木々が風で靡く。
少し目線を上に、匂いをかぐ。
植物ほどやさしいものはないと思う。
地球を育み、生物を包み、空気を浄化してくれる。
言葉はしゃべれないけれど、きっと優しい言葉を使うんだろうな。
「ありがとね。」
風に振られた木々が返事をする。
ザー...ザー...
「ふふ...」
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