第4話

戦争の最初の被害者は博士で、ここからロボットの反乱がおきたのか...

それに、脳がなかったっていうのはどういう事なんだ?


見出しの三行以外は泥にまみれていたり破れていたりで内容はわからない。

この戦争の始まりを知り、私の脳内は様々な憶測が飛び交っていた。


今はそんなことを考えている暇ではない。

考えたところで答えは出やしないし時間の無駄だ。


「痛っ!」

頭痛とともに何かが流れ込んでくる。


ビリ...ビリ......

東経139度45分53秒

北緯35度40分39秒...............


しかしそれはすぐに収まった。


なんだったんだろう...


新聞を手放し、すぐに食品のおいてあるモールの西に向かう。

小さなころ何度か連れてきてもらったおかげで、場所をなんとなく覚えていた。

すると、向かう途中の廊下にコンパスが落ちていた。

いつか使えると思いリュックに詰めておく。

食品コーナーにつくと書店と同様に、倒れた棚や土の色をした食品だったものが

転がっている。


缶詰のおいてあった棚に向かうと倒れた缶詰棚の近くに缶詰が大量に転がっていた。


「けーちゃん見て!!いっぱいあるよ!!」


トマトや肉、鯖にカレイなど選り取り見取り。

帰りも歩いて帰ることを考慮して取りすぎないようリュックに入れていく。

すでによだれが止まらない。


「よしよし...」


一通り詰め終わりモールを出ようと立ち上がった。

振り返るとCAREがいない。

缶詰に夢中で気づかなかったが、CAREの電気は少し前からなくなっていて

わずかな日の光で缶詰をあさっていたことに気づいた。


「けーちゃーん?」


心臓の脈打つ音が聞こえる。

まるで世界に一人になったような恐怖が襲ってきた。

あたりを一周するように見渡しても光すら見えない。


「ねぇ!!けーちゃん!!」


CAREが何の報告もなしに消えるなんて初めてだ。


怖い。


震える声で何度もCAREを呼んだ。

血の味がして、足が震えている。

何時間も走りながら呼び続けた。


死んだ世界にたった一人で立っている恐怖が、返事が返ってこない切なさが、

目を逸らしていた現実が目の前を埋め尽くした。


涙をぬぐい外を目指す。

二人で歩いた道を一人で歩く。

建物のきしむ音、風のうめき声、響く足音。

全てが耳に入ってくる。


あっという間だったはずの廊下が、永遠に思えるほど長い。

下を向きながら早歩きで急いだ。


やっと出口が見え、一心不乱に足を動かした。

外に出ると、真っ赤な夕焼けがあたりを照らしていた。


ここから家に向かっても日没までに間に合わない。

今日は街のどこかに泊まろう。


ショッピングモールの側面には非常階段が付いており、そこを通って屋上に

向かうことにした。

7,8分ほどかかったが屋上にたどり着いた。

屋上から見える景色は圧巻だった。

地盤沈下と海面上昇の影響で街の南側を飲み込んだ海に落ち行く太陽が見えた。


「あの頃から変わらないのは海だけだね...」


そう言っても、返事は帰ってこなかった。












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