第3話 再婚約

「え、再婚約ですか?」


 お父様とお茶をしていますと、ふいにお父様の口から”再婚”というキーワードが出てきましたわ。


「そうだ、再婚だ!」


「ですけれど、私は婚約破棄をされた傷物令嬢ですわよ? こんな私と婚約して下さる殿方がおられるとは、とてもじゃないですけれど思いませんわ?」


「自分のことを”傷物”だなんて、言うんじゃない。例えどんな姿や立場になっても、お前はかわいい俺の娘だ」


「まぁ、お父様ったら」


 お父様からの情熱的な愛情は、キュンとしてしまいますわ。


「それで、どんな殿方との再婚約ですの?」


「第一王子だ」


「……お父様、正気ですの?」


 第一王子のことは私はよく知りませんけれど、少なくとも良い印象は皆無ですわ。

 第二王子が運命の相手なんて信じている、頭お花畑野郎だったのですから。

 その兄となると……すでに印象が最悪ですわ。


「サチアの気持ちは、もちろんわかる。印象最悪だよな」


「ええ、当然ですわ」


「俺もこの話を国王陛下から言い渡されたとき、同じ気持ちだった」


「つまり、どこかのタイミングで印象がわかったんですわね」


「聡い子だな。その通り、実際に第一王子と会ったら……印象がガラリと変わったんだ」


 お父様はニヤリと笑みを浮かべますわ。


「第一王子は第二王子とは……全くの別物だぞ?」


「と、言いますと?」


「俺も少ししか会話をしていないが、すこぶる頭が良いと言うことは理解できた」


「なるほど、ですけれど頭が良いだけなら第二王子も頭がいいですわよ?」


「なんて言えばいいんだろうな……。学習面での頭脳の良さではなく、こう……品と言えば良いんだろうか」


「何となく言いたいことは理解できましたわ」


 つまり、知的ではなく、品がよいのでしょう。

 第二王子も知能はよいのですが、如何せん品が無かったですからね。

 品が無いからこそ、モモを選んでしまうのでしょうけれど。


「ともかく、明日第一王子と会ってみればわかる。お前もきっと、好きになるはずだ」


「そう……でしたらいいですけれどね」


「気乗りしないか?」


「ええ、当然ですわ」


 第二王子がアレでしたもの。

 いくらお父様の説明を聞いても、実際に会わないことには第一王子の印象がよくなったりはしませんわ。


「まぁ、気持ちはわかるが。だが、実際に会っていない内から、悪態を吐くというのは失礼だと思わないか?」


「……それもそうですわね」


 お父様の正論。

 それは何とも、私の心を抉りますわ。


「それでは明日、第一王子と面会をしような」


「……ええ、わかりましたわ」


 少々強引なお父様。

 ……こんなお父様だからこそ、私は心を許しているのでしょうね。

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