まだ、時間がいるかな……【恭平】

店を出て歩きながら考えていた。

もう少し、六花といたいって……。だから、晩御飯に誘った。

誘ったのは、六花をもっと見ていたかったから……。

衛から奪えるかと思ったが、ここに来るまでの二人を見ていたら無理なのがわかった。


「何か飲み物もらう?」

「別にいいよ。待っとこう」

「そうだね。あっ、恭平」

「何?」

「ずっと一緒に居てくれる?」

「当たり前だろ。美奈子がいなかったら、俺困るし」

「困るって何?」

「辛すぎて困るって事だよ」


愛してないだけで、こんなにもスラスラと気持ちを口に出せる。

時々、自分が怖くなる。

好きな人には、好きってさえも言えないのに……。

美奈子には、何でも言える。


でも、こうやってちゃんと口に出しとかなきゃ、美奈子が俺と別れるなんて言い出したら本当に困る。

俺の計画では、子供が産まれた後に六花と不倫する予定だ。

美奈子がいなくなったら、それは成立しない。



「お待たせ」

「ありがとう」


美奈子と結婚したかったわけじゃない。

だけど、他の人と一緒になったらこうやってWデートなんか出来ない。

だから、俺は美奈子の愛を利用してこうやって一緒にいるだけだ。



【したかったのは、美奈子とじゃない】

【したかったのは、恭平とじゃない】

【したかったのは、六花とじゃない】

【絶対にまもちゃんを美奈子には渡さない】



俺達、四人は今日も明日も明後日も続けていく。

それぞれに秘めた想いを隠しながら……。


「お待たせ、パスタ出来たよ!六花、グラス持ってきて」

「取り皿とグラス持ってきた」

「じゃあ、ワイン取ってくる」

「私、サラダ作ってくる」

「うまそう」

「うわーー、すごい。お皿にいれるね」


互いに思う本心なんかどうでもいい。

必要なのは、この時間。

この時間さえあれば何もいらない。

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【完結】したかったのは君とじゃない【カクヨムコン応募作品】 三愛紫月 @shizuki-r

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