美奈子との交際

「恭平、マジで言ってるのか?」

「そうなんすよ。たまたま、美奈子に告白されて」


藤村先輩と再び会ったのは、美奈子と交際して一週間後だった。


「でも、美奈子ちゃんって六花ちゃんの親友だよな?」

「そうですよ!小学校からずっと一緒にいる幼馴染みであり親友です」

「だからか……」


藤村先輩は、妙に納得した表情をする。


「なんすか?その顔」

「いや……。六花ちゃんの事、話してもバレないもんな!小学校からだとって思ってさ」

「かも知れないっすね」

「恭平……。めちゃくちゃ悪いやつだな」

「そうっすか?俺的にはハッピーエンドだと思ってますけど」

「いやいや、バットエンドだろ?で、美奈子ちゃんを好きなのか?」


藤村先輩は、笑いながら手を左右に振った後ですぐに真顔になった。

俺は、その言葉に首を左右に振って見せる。


「まさか!本気で言ってるのか?俺でも、優子の事はそれなりに好きだったぞ」

「そのまさかですよ」

「って事は、告白されて付き合ったのか?」

「いや違いますよ。俺から告白したんです」


藤村先輩は、俺の言葉に驚いてかなりひいていた。

当たり前だ!

好きでもないひとに告白する人間など、初めて出会ったのだろう。

だけど、俺は六花の為なら何だって出来た。


「恭平……恭平……。また、聞いてなかったでしょ?」

「あっ、ごめん」


気を抜くとすぐに現実逃避したくなるぐらい美奈子は好きじゃない。


「六花にも聞いてたら、やっぱりダイヤモンドとかないシンプルなのがいいみたい。ほら、家事で引っ掛かるから」

「そうかもな!引っ掛かったら危ないからな」


小ぶりで低い鼻に細い切れ長の目。

清楚系が好きな男には受けそうな美奈子の見た目を俺は苦手だ。

それよりも、俺は六花の顔の方が好き。

大きな目に高い鼻に小さな唇。

話をするとクルクルと表情が変わり見ていて飽きない。


「じゃあやっぱりこういうのにしようかな?あっ!でも、もう一件みたい」

「えぇ!マジかよ。ごめんな、衛、六花」

「いいよ!俺は別に楽しいし。あっ、トイレ行ってくるわ」

「私も大丈夫だよ」

「私もトイレ行ってくるね。恭平」

「あっ、うん」


俺と六花は二人になった。

六花は、指輪を眺めている。

その横顔が、凄く綺麗だ。


「どんなのにしようと思ってる?」

「うーーん。シンプルがいいかな?でも、ホワイトゴールドとゴールドのコントラストも綺麗って思うの」


六花の笑った顔を見ると抱き締めたくなる。

もし、指輪を一緒に選ぶのが俺だったら?

六花と結婚するのが、俺だったら?

俺、藤村先輩みたいに待てるのかな……?


衛と結婚

「……するな……」

「えっ?」

「結構するなってこのコンビだと」

「うん。そうなんだよね!予算オーバーだよね」


衛と結婚するなって言いたかったけど、言えなくて……。

何とか誤魔化せてよかった。


「でも、恭平君が美奈子と結婚するとは思わなかった!」

「そう?」

「うん。二人は、まだ結婚とか考えてないと思ってたから」

「そんな事ないよ。やっぱり、子供とか欲しいって考えたら早い方がいいからさ」


美奈子との子供なんていらない。

だけど、子供ぐらい作らなきゃ不自然だよな。

藤村先輩も子供いるからな……。


「そうだよね……二人、遅いね」

「ああ、そうだな」

「あのね、恭平君」

「何?」

「まもちゃんから何か聞いてない?」

「何かって何?」

「聞いてなかったらいいのいいの。忘れて」

「いや、気になるし……」

「まもちゃん、他に好きな……」


六花がそこまで言った時だった衛と美奈子がトイレから戻ってきた。


「じゃあ、次の宝石店見てから晩御飯食べよう!今日は、私が奢るから」

「美奈子が奢ってくれんの?」

「長い時間、付き合ってくれたお礼。あっ、恭平にはないから」

「何でだよ!」

「ハハハ。やっぱり、二人は仲いいな」

「ほんとに……」


さっき六花が言いかけた言葉が気になる。

他に好きな……って事は、衛は誰か好きな奴がいるのか?

六花と結婚するのに……。

って、待てよ!

衛に他に好きな奴がいるなら、俺が美奈子と結婚する理由があるのか?

結婚しなくても六花を奪えるんじゃないのか?


「恭平……行こう」

「ああ」


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