第3話 キスチャンス2回目!

 学校の帰り。電車から降りると駅のホームで、他校の茶髪の男子生徒に呼び止められた。耳の片方にだけピアスもしている。


 「好きです、付き合ってください。」

 いいね~、直球の告白。ああ、過去にもされたっけ。初告白にちょっと浮足たったことを思い出す。私の返事は、そうそう、言い出す前に彼がこういう。

 「俺のこと、知ってほしいから。友人・・・、知り合いになるところからどう?」

 なかなかどうして。17歳にしてよい心配り。だからひとまず、頷いてしまったんだよね。周囲にいないタイプだし、お顔も綺麗だし。寒いのに駅のホームで自己紹介をしつつ、おしゃべりをしていた。

(移動すればいいのに、過去の私は初告白にどきどきして、駅のホームで話していたんだっけ。)


 青春だなぁ~と噛みしているところで、思い出す。そうだ・・・。この後だ、キスチャンスの2回目。


 「おい、誰、そいつ。」

 はい、間宮の合流。きました。電車から間宮が私と茶髪の男子がホームで話している姿を見つけ、自分が降りる駅の手前で降りてしまったという。


 その後、間宮は私の部屋に来た。私が間宮と仲がいいことから、家族同士も交流ができ、ママ同士も買い物やお茶するくらい仲がいい。だから間宮が私の家に来ることはたびたびあった。でも、今日は家族が出払っている。


 私の部屋で不機嫌な顔を隠さず、むくれている間宮に、砂糖のミルクをたっぷり入れたコーヒーを出した。もはやコーヒー牛乳だ。

 「あいつ、評判悪いから。」

 「知ってるの?」

 「男の中ではけっこう、有名。手を出すのが早い。コロコロ女を変える。やめておけ。」

 過去の私はこの言葉に頭にきたんだっけ。私が軽い女のように見下された気分になったのと、彼女がいるヤツにいきない辞めておけとか、言う権利があるのかなと。

(私が間宮に対して恋愛感情が無ければ、良いアドバイスとして冷静に受け取れたのかもしれないな・・・。)


 あ。やばい。喧嘩にならないと、キスチャンスが訪れない。言い合いになって、コーヒーカップが落ちそうになって、それを互いに防ごうとするも、ぶつかって、床に倒れないと。倒れたときにぐぐぐっと、顔が近寄り、互いの唇がほぼゼロの距離になる。


(だめだ・・・。そんな偶然に起こったハプニングを、今さら自力では演出できない・・・)

 がくんと首をうなだれる。「わかった。断るから。」と、答えた。

 キスチャンス2回目、不発。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る