文を通して
吉田さんと文通をして分かったことは、吉田さんも昔文通をしていた恋人がいたこと。今もその人のことを想っていること。それも深い愛があるみたい。詳しくは教えてくれなかったけど、共通するとこがあってなんだか親近感が湧いてしまったし、昔をよく思い出すようになった。最近のことはどんどん忘れっぽくなるのに。
恋文には、『可愛いよ。』や『大好きです。』とかあの人が口にできない言葉がたくさんあった。いつもは言わないくせに、別れる前に突然その言葉を口にしていたわ。
『愛しています。』
びっくりしたわね〜。最近やっと思い出して顔が赤らんでしまうわ。恥ずかし恥ずかし。全部吉田さんとの文通のせいだわ。
吉田さんはあれから毎日ここにくるようになった。手紙を持って。そして、いつも笑顔でいた。心から楽しんでいるように見えた。楽しんでいるのが見えると、こちらも楽しくなって何を書こうか悩むのもまた楽しくなってきていた。
ある時佐々木さんから「なんだか段々笑顔が増えてきてますね!可愛いですよ!」なんて声をかけられたわ。
「あら、失礼ね。」とか言っちゃったけど嬉しかったわー。
でも最近起きるのも億劫だし、文通以外やる気も起きないのよね。どうしたもんかしらね。
「そういえば昨日の日付間違っていましたよ?」
「あら。それはすいません。カレンダー見ずに書いちゃったかしら?忘れちゃったわ。」
あー、私どうしちゃったのかしら?カレンダー見たはずなのに。
吉田さんが帰り際に言われて初めて知る間違い。
もうすっかり外は暑く、乾いた地面の匂いがした。
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