第10話闇の中

「何にもないね」

「ピィ……」

小鳥は咲奈の言葉に同意するかのように、鳴いた。

先程出会った小鳥は、私の手のひらに乗ってずっと一緒にいてくれている。

咲奈はその小鳥を心の支えに、奥へと進んでいく。

そこにあったのは

「これ……いつもお母さんがつけてた指輪だ」

お母さんが外に出るとき、肌身離さずつけていた指輪だった。

「でも……なんでここに?」

咲奈のいる場所は、お母さんが迷子になった山ではなく工場だった。

「じゃあ……もしかしてお母さんがここにいる!?」

咲奈は小鳥を地面に置き、両手を口元に持っていき、大きな声で叫んだ。

「お母さん!どこにいるの~?」

少しの期待を抱いて叫んでいると、キーッと鉄と鉄をこすり合わせたような音が聞こえてきた。

お母さんではないかと期待し、勢いよく後ろを振り返ったその時、目の前で何かが飛び散った。

それは―――血だった。

咲奈は、血が噴き出してきた足元を見るとそこには

「ことり……ちゃん?」

真っ二つになった小鳥がいた。

「いや……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

咲奈は、小鳥が真っ二つになっているのを確認するや否や、顔を絶望一色に染めて叫んだ。

真っ二つにした張本人は、その光景を見て恍惚の表情を浮かべ、先程小鳥を切って赤く濡れた鎌を引きずりながら、にじり寄ってきた。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

咲奈は叫びながらも、泣きながらも、全力でただひたすら走った。

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