第5話ひた走る

「あの子……一体どこに!」

私は、がむしゃらに走った。

「っぶない」

私は、ずっと同じことをしていた。

お化けを見つけたら、すぐに近くの茂みか看板の裏に隠れてやり過ごす。

言い伝えでは、山の神は魅入ったものが自分の手の届かない場所に行くと、無数のお化けを仕向けて殺すと言われていた。

「いくら何でもいすぎでしょ!」

撒いたと思ったら、2、3分せずに遭遇している感覚だ。

これだけの頻度で遭遇してると、あの子が死んでいないかがとても心配になる。

「いや……死んでるか死んでないかなんて今はどうでもいい……死体になっていようがいまいが絶対に探し出す!」

そう決意を固め、私は再び走り出した。

***

「田んぼ……」

私は、気が付けば今まで見たこともない土地にいた。

私は、幼い時からずっとこの街に住んでいるため知らない場所なんかなかった。

「こんな場所知らない……ん?何これ」

私が周りを確認していると足元に何かが落ちていることに気付く。

「指輪?なんでこんな所に……いや今はそんな事どうでもいい妹の元に行かないと」

私は、乱暴にズボンのポケットに指輪を入れ、妹がいるのではないかという少しの期待を胸に田んぼの奥に見える山へ向かった。

「ちっ!やっぱりここにもいる!」

田んぼの至る所に、水死体のお化けが体のあらゆる穴という穴から水を垂らしながら徘徊していた。

「気持ち悪い!」

私はそう吐き捨て、さらに加速した。

かなりの時間走り、やっとの思いで田んぼを抜け、山の入り口までたどり着いた。

「これは鉄格子?」

やっと着いたと思ったら、鉄格子に鍵が掛けられていた。

「鍵……もしかして!」

走っている時、ライトの灯りを反射して光っていた物があったのを思い出して鍵があったでだろう場所へと向かった。



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