第2話安堵
「……やっと家……そうだ咲奈は起きているかな……」
私は、少しでも早く安心するために妹の顔を見に部屋へ向かった。
「咲奈……入るよ」
話しかけても、部屋からは何一つ応答がなくさっきまでのこともあり、私は不安になり乱暴にドアを開け、中へと入った。
「すぅ……すぅ」
部屋の中に入るとそこには、規則的な寝息を発する妹がいた。
「よかった……」
私は、安堵の胸をなでおろしたがそれと同時に、怒りが込み上げてきた。
なぜ私とお母さんが命を懸けて、生き延びたのにこいつは何もせずただのうのうと寝ているのか、それならお母さんの代わりにお前が死ねばよかったと。
そんなどす黒い感情が溢れ出していたその時
「おねえちゃん?」
妹の目が覚めた。
妹は自分の顔をずっと睨んでいたお姉ちゃんに対し、怖気ずくことなく
「どうしたの?そんなに私の顔を睨んで……?何かあったの?」
妹は、泣き止まない赤子に語り掛けるかのように、慈愛に満ちた優しい声で語り掛けた―――いつか夜眠れなかった妹に私が掛けたように。
「っ……」
私は、何も言えなかった。
果たしてそれは、姉が自分のことを憎悪の目で睨んでいたのにも関わらず、寄り添おうとしてくれた妹への罪悪感だったのだろうか。
「わたっ……わたしはっなにをっ!」
私は、顔を酷く歪めて大粒の涙を流した。
「ごめっごめんなさい私は!私はあなたに!」
私が、妹に対して考えていた酷い考えの数々を言おうとした瞬間。
「うん……だいじょうぶだよ……私にはお姉ちゃんがなんで泣いてるのかなんて分からないけど、もう大丈夫だよ」
妹は、私を抱きしめ、安心させようとしてくれた。
妹の何の根拠もない大丈夫が今は、只々嬉しかった。
私も死ぬかもしれない、そんな状況から解放されたとわかると、眠気が一気に押し寄せてきた。
妹は変わらず抱きしめてくれていたから、私はそのまま眠りについてしまった。
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