第3話馬鹿

「そんなことがあったんだ」

私は妹に泣かされ、気が付けば昼頃になっていた。

一度休んだおかげで頭の中も整理がつき、昼ご飯を食べながら妹に昨晩のことを説明した。

「ならお母さんのこと探しに行こうよ!見つかるかもしれないよ!」

私は、噓を付いた。

お母さんとは、山で逸れてしまい私は何とか山から出れたが、お母さんはまだ山の中にいると。

「―――だからお母さんは今家にいないの」

咲奈はまだ小学校低学年ということもあり、私の嘘を信じて疑わなかった。

「私達が行っても迷子になっちゃうから警察に任せよう」

「そうだね」

咲奈はそのまま昼ご飯を食べてすぐ、宿題やってくると言い自室へと戻った。

「ふぅ……大丈夫かな?」

私が嘘をついた理由は、妹を巻き込みたくなかったからだ。

無関係な妹を巻き込むことは決してできない。

「咲奈がまだ小さくてよかった……あんな即興で考えた苦し紛れの嘘、小学生以上には通じないよ」

私は、妹が聞き耳立てていることに気付くことはなかった。

「お姉ちゃんの噓つき……」

***

「ん……寝ちゃってた」

起きた時にはもう、夜の9時を回っていた。

「早く夜ご飯作らないと……って何であの子私の事起こしてくれなくれなかったんだろう……寝てるのかな?」

私は、寝ているであろう妹を起こしに部屋へと向かった。

「咲奈入るよ」

私が見たのは、危惧していた中でも一番最悪な状況であった。

「居ない……さっき通ったトイレも電気が付いていなかった……てことはもしかして……!」

私は急いで玄関へと走った。

「靴が……ない」

妹は、家を出ていた。

しかも”夜”に!

「あの子のバカ!」

私は、ろくに準備もせずに家を飛び出した。

「お願い!無事でいて!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る